13.永遠の誓いを

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「シシィ」 「……はい」 顔を床につけたままこちらを見てくれないシシィに少しだけ悲しさを覚えた。 「顔を上げて」 僕の言葉でやっとこさ顔を上げてくれたシシィは大きな丸い瞳を涙で1杯にさせながら僕のことを見る。 握っている手はやけに冷たくて、彼女が緊張していることが伝わってきた。 「シシィ=オルコット」 「っ…はい、リュカ様」 「君には1ヶ月の間、僕の身の回りのことを1人でしてもらう」 「……え」 「ラナやユンナに手伝ってもらうのは駄目だよ。それから、その1ヶ月の間に君の家族のことや君自身のことを僕に教えること」 シシィの瞳から一筋涙が落ちていき、その後を追うように次から次に彼女の目から涙が溢れてきた。 それをハンカチで拭いてあげながら、自分は甘すぎるのかもしれないと少しだけ思ったけれど、アデレードにチャンスをあげたようにシシィにも手を差し伸べてあげたいと思うんだ。 僕は今まで自分のことで精一杯で皆のことを何も知ろうとしてこなかったから、これからは沢山話をして知って行きたいって思う。 そうすることで皆に何か起きた時守ってあげることが出来るかもしれないから。 「わ、私……許されないことをしたのに……」 「この罰じゃ不満?結構大変だと思うけれど」 「……っ、ありがとう、ございますっ、本当にっ……」 泣き崩れるシシィの手をしっかりと握ったまま、この日のことを忘れないようにしようと誓った。 僕はもう、ただ皆に優しくされるだけの人間では居られないし、皆に護られるだけの存在でいることは出来ない。 これからは彼女達を僕も守っていこう。 僕は弱っちくて、アデルバード様や皆に助けられながらじゃないと立ち上がることも難しいけれど、それでも自分の出来ることを最大限活かして皆を助けられたらいいなって思う。 自分の中の何かが大きく変わった気がした。 それは、形にははっきりとは表すことは出来ないけれど、確かに何かが変化して僕はその変化の渦に呑まれながらこれからも、前へと進んでいく。 「シシィ、ユンナ」 「「はい」」 「不甲斐ない主だけど、これからも傍にいて欲しい。これから先なにがあっても君たちの事は全力で守り抜くから」 前にアデルバード様は、僕が皇后陛下になったら人々を守る立場になるのだと教えてくれた。 その時にはいまいちピンと来なかったそれを今やっと理解出来た気がする。 コンコンと部屋のノック音が聞こえて、シシィの手をそっと離すと彼女は涙をぐしぐしと拭ってユンナと2人壁際の方に避けた。 僕が入室を許可すると、メイドさんが入ってきてアデルバード様が執務室に僕のことを呼んでいると教えてくれた。 「行ってくるね、シシィは着いてきて」 「……はい」 ユンナが小さく僕にお辞儀をするから、僕はそれに笑顔で返してシシィと共に部屋を出た。 シシィは不安そうな顔をしていて、僕は大丈夫だよって一言伝えてから執務室まで向かった。
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