14.春の訪れは……

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寝室に戻った僕は夜になるまでアデルバード様にどう話を切り出すかずっと頭を悩ませていた。 窓の外を見ると大きな丸い月が空に浮かんでいてその周りを星々がキラキラと光ながら取り囲んでいる。 まるでアデルバード様と初めてあった日の様に美しい夜空を見つめながら、悩んでも仕方ないって思った。 思っていることをそのまま伝えたらいいんだ。 ルート様もそう言ってたじゃないか。 夜空を眺めているとまるで月や星が僕を応援してくれているみたいに思えて勇気が出てくる。 「リュカ起きていたのかい」 「……アデルバード様」 ベッドに腰掛けてずっと夜空を眺めていると、アデルバード様が部屋へと戻ってきて僕は微かな緊張に声を強ばらせた。 「なにかあった?」 すぐに僕の様子が変だと気づいて彼が僕の元に来てくれる。僕の隣に腰掛けたアデルバード様は僕の横髪を耳にそっとかけて僕の顔を覗き込みながら、聞かせてって優しい声で言ってくれた。 僕はゆっくりとアデルバード様の方に顔を向けると、自分の思いを1つ2つと吐露していく。 「僕が花人じゃないかもしれないという噂があるのはご存知ですか」 「ああ。けれど、君は花人だ。なにも気にする事はないよ」 「……でも、花人なのに開花期は来てません……」 「リュカ……」 泣きそうで、思わず唇を噛み締めると、アデルバード様がそっと僕の唇に手を当てて噛むのを辞めさせる。そして、そのまま彼が僕の唇に1つキスをしてくれた。 そのキスがあまりにも優しいから、我慢していた涙が溢れてきてしまう。 「僕っ、アデルバード様と契りを交わしたいです。それなのにっ……、僕のせいでっ、僕の開花期が来ないせいでっ、僕が出来損ないの花人だから契ることが出来ないっ」 嗚咽を零しながら泣き続ける僕をアデルバード様が優しく抱きしめて頭を撫でてくれる。 彼の匂いに包まれると安心して、更に涙は止まらなくなって、アデルバード様に縋りついてひたすら泣いた。 彼を愛してる。 愛しているからこそもっともっと深い交わりを求めてしまう。 もしも、僕が花人でなければきっと今が1番だと満足出来たはずなのに、皮肉にも花人として産まれてきた僕はアデルバード様と契りを交わしたいと望んでしまうんだ。 「リュカ、焦らなくてもいいんだよ」 「……っ……」 「私達はまだ夫婦になったばかりだ。だから、焦らなくともいつかその機会が訪れるはずだ」 「もしも、来なかったら?」 「変わらないよ。私はリュカを死ぬまで愛し続ける。それだけだ」 「……っ……愛してますっ。僕も、僕もアデルバード様をずっとずっと愛し続けます」 アデルバード様の唇に僕から口付けを送ると、アデルバード様が僕の目をじっと見つめながら誓うよってはっきりと言ってくれた。 「ねえ、僕の項噛んでくれませんか」 僕のお願いにアデルバード様は微かに驚いた顔をした後に、そっと僕の首に顔を寄せた。 アデルバード様の匂いが今まで以上に濃ゆく香った気がして、僕はその匂いを感じながらそっと目を閉じる。 「私はリュカを絶対に手放しはしない」 彼の言葉に返事をする前に、鈍い痛みが首に走って僕はその痛みに耐えながら涙を流す。 ずっとずっと、僕は貴方のものです。 貴方だけを愛し抜きます。
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