1話目 【 休養 】

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『女子力』という言葉がある。意味としては女性らしさや女性の魅力を指す言葉であり、言うならば『男気』の女性バージョンのような使われ方をする。 中には男性であっても女子力が高いなんて言われるケースもあり、この場合女性っぽい行動等を対象に使われる。 しかしそれは近年用いられ始めた言葉に過ぎない。 本来の『女子力』とは、女性のみに宿った特異な力のことである。 初めて観測されたのは今から二百年以上前の時代、突然世界中の女性に宿り、女性たちはそれにより急激な身体的変化を起こした。 かつては男尊女卑なんて言葉があったようだが今では完全に死語。使われるのは女尊男卑、つまり逆の意味合いの言葉が主流になっている。 当然だ、力で優れた女性が上に立ち、無力な男性は下に跪くのはごく自然な結果なのだから。 よって男の価値は急激に下がり、なんとか対等の関係にしようと様々な政策が行われてきたが、やはり一度根付けば取り払うのは難しい。 『女子力』の有無で価値が左右される、女か男かで優劣を付けられる時代になった。 ───ところが、どういうわけか女性にしか宿らない『女子力』を持つ男が現れた。 世界のバグのような存在。その男は『女子力』を持っていたことを知り、知られ、ある組織に加入することになった。 組織名は『桜景色』。 轟魔と呼ばれる異界の怪物たちと戦い日本を守るべく創設された優秀な女性たちで結成された組織だ。 男の名は仲羽(なかば) 拓徒(たくと)。高校二年生のどこにでもいそうな少年。 彼は『桜景色』の第八チームに所属し、これまで何度も轟魔と戦ってきた。 そんな彼は、今、 「プールとか久々だな」 第八チームのメンバーと共に屋内プールにやって来ていた。
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