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10
ココアを飲み干すと、須永は安曇のスーツを脱がせた。ジャケットをハンガーに掛け、折り目を潰さないようにスラックスを伸ばす。
「安物だし、そんなに気を使わなくてもいいよ」
「明日も着ていかないといけないんだから皺にならないようにしないと。シャツとネクタイは貸せてもスーツは無理だしね」
手入れを終えた須永が、肩にブランケットをかけてくれる。
「寒くない? もっと室温上げようか?」
「いや、大丈夫だよ」
空調の効いた室内は、ワイシャツ一枚の姿でも寒さは感じない。むしろ明日はここから職場に向かうのだと思うと、一気に体温が上がった気がした。
「うん。やっぱりエロいな、碧さんの脚。最初にホテルに行った時も、俺秒で悩殺されたもん」
シャツの裾から覗く脚をまじまじと眺められ、安曇は慌ててブランケットを腰に巻いた。女性じゃあるまいし、脚を見られたくらいで何を狼狽えてるんだと思うが、相手が須永だと猛烈に恥ずかしい。
「早く全部脱がせたい。寝室に行こう?」
艶っぽい笑みを浮かべながら、須永がこちらに向かって手を差し出す。安曇は唾を呑み込むと、おずおずと彼の手を取った。
リビング同様、寝室もきちんと整頓されていた。ナイトテーブルの上にローションとコンドームの箱を見つけてギョッとする。
「ああ、それ。横浜に行った時に買ったんだ。ネットで使い方も勉強したけど、いたらないところがあったら遠慮なく言ってね」
臆面もなく告げ、背後からぎゅうぎゅう抱きしめてくる。項に口づけながら内腿を思わせぶりに撫で上げられて、喉からか細い吐息が漏れた。
「あっ?」
「碧さん、こっち向いて。腕はこっち」
振り向かされ、首に腕を回すように促される。言われた通りにすると、須永は安曇の腰を抱き上げ、そのままベッドに倒れ込んだ。
「わ、渉くん」
「待てなら聞けないよ。……やっと碧さんを抱ける」
はあと熱い息を吐き、須永が激しく口づけてくる。侵入してきた舌に喉奥まで深く侵されて、呼吸すらままならない。
「ふっ、うっ……はあっ……」
「碧さん……」
視線を合わせたまま、須永が唇の唾液を舐め取る。劣情の滲んだ瞳で見下ろされ、喉がヒクリと震えた。
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