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「……ずいぶん性急なんだな」
「こういうのは嫌い?」
笑みを浮かべながら、情欲に滲んだ目をきゅっと細める。暴力的なまでの色気に当てられて、腰から背中がゾクゾクした。
「嫌いじゃない……。すごく興奮する……」
陶然と呟き、男の首を抱き寄せる。すかさず腰に腕を回され、首筋にきつく吸いつかれた。チリッと鋭い痛みが走り、痕をつけられたのだとわかる。
「っ……! ちょっと、痕……っ」
「うん。ごめんね」
口先だけの謝罪をして、男が腰から脇腹を撫でるように摩る。熱い手が胸を這い、先端の尖りをあやすように転がされて、鼻から甘えるみたいな吐息が漏れた。
「んっ、ふうっ……」
「やらしい声。かわいい」
自分の方がよっぽどいやらしい低音で囁いて、クニクニと乳首を弄る。硬くしこった小さな粒の感触がよほど気に入ったのか、摘んで捩ったり、指でやんわり押し潰したりと、男は執拗に乳首を責めてくる。
やがてそこが赤く色づくと、弄られすぎて腫れぼったくなったその場所に、ねっとりと舌を這わせてきた。
「うっ、ああ……っ!」
舌先で突かれ、じゅっと強く吸われて、背中が弓形にしなる。浮いた下肢に硬い感触が触れ、肌がざわりと粟立った。
「――ちょっとだけ待って」
呻くように告げて、男が上半身を起こす。
熱っぽい目で安曇の肢体を見下ろしながらニットの裾に手をかけ、荒々しく脱ぎ去ろうとしたその時、男の尻ポケットに収まっていたスマートフォンが着信を告げて振動した。
「……鳴ってるみたいだけど」
「そうだね」
「出たら?」
男はしばらく無言で固まっていたが、着信が途切れそうもないと覚ると、安曇の上から体を退けた。
「すみません」
ベッドの縁に腰かけ、渋々といった様子で通話に応じる。その広い背中にうっとりと見惚れながら、安曇は乱れた息を整えた。
親しい相手ではないのか、答える声に甘さはなく、口調も硬い。腰にクる低音もいいけれど、こんな風に冷めた声もたまらない。
放って置かれて切なく疼く乳首を持て余し、安曇は膝を抱いて三角座りをする。こうしていないと、目の前の背中に縋りついてしまいそうだった。
やがて男が通話を終え、尻ポケットにスマートフォンしまう。ようやく再開かと期待に胸を膨らませたのも束の間、重々しい溜め息をついて彼がベッドから腰を上げた。
「ごめんなさい。俺、行かないと」
「――はっ?」
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