1人が本棚に入れています
本棚に追加
「料理に髪の」
「お客様の髪ではないですか? ほら、私はこれですから、入る訳が無いんですよ」
スキンヘッドを撫でる社員。しかし、クレーマーは譲らない。
「だが、料理を運んだ」
「ああ、呼びましょうか?」
そして、社員に呼ばれる俺。俺の髪型をクレーマーに見せつける社員。震え始めるクレーマー。
「こんな店、二度と来るか!」
漫画か何かの様に、小銭を叩きつけて逃げ出したクレーマー。思い通りのいじめが出来ないと、こうもみっともない敗走をするんだな、いい歳した大人なのに。
「ありがとうございます!」
低く周囲に響く声で言う社員。その声でコップは震えた。
「さて、これでアレが言った通りに、二度と来なきゃ万々歳なんだが」
額を撫でながら話す社員。ツルツル部分を撫でるのは、クレーマー対応ではなく癖だったのだろうか。
とにかく、散らばった小銭を拾い、食器を片付ける。クレーマーが帰ってからはちらほらと客が入り、忙しくなった。
スキンヘッド社員は、クレーマーが諦めるまでヘルプに来てくれた。裏を返せば、「二度と来るか」は嘘だった。
しかし、何度も敗北して漸く諦めたのか、別の店がターゲットになったのか、クレーマーは消えた。そして、バイトも少しずつ増えた。
そうして、忙しくもクレーマーは消え、まあまあ平和な店になった。スキンヘッド社員さんは、また別のクレーマーに対応する為、今日も筋肉と語り合っているそうだ。
ー完ー
最初のコメントを投稿しよう!