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「あの……」
「……んぁ?……あぁ、おはよ」
やばい。爆睡してしまった……。
「おはようございます……」
めちゃくちゃ目泳いでんな。何も覚えてねーんだろうな……。
「大丈夫。ちゃんとセックスしたから」
「えっ……」
「俺も酔ってたし経緯は覚えてないけど、気づいたら突っ込まれてたわ」
「……」
「あーいいよ、気にすんな。気持ちよかったし。互いに記憶もないわけだし、後腐れなくバイバイしようじゃん」
マジでイケメンが過ぎる。これでゲイだったら迷わず交際を申し込むんだけどな……。
「あの、お詫びに食事でもいかがですか?」
なんだマジメか? 可愛いな。
「あのさ」
「はい」
「お気持ちは嬉しいけど、俺ゲイだから」
「……え?」
「つまり恋愛対象が男だから、期待させるようなこと言わないで」
「……期待って……じゃあ僕も男が好きだって言ったら、食事に付き合ってくれるんですか?」
なに言ってるんだろうこの子。可愛すぎない?
「いやいや、どう見てもノンケじゃんキミ」
「……」
「じゃあね。ミサキちゃんによろしく」
「あっ、待っ……」
ダメだダメだ……待つな俺。だってあんなイケメンに……しかも性格も素直そうな年下のノンケ君にさらっとデートなんて誘われてついて行ったら、確実に好きになっちゃうし。
ノンケとの間にラブが生まれないのはすでに立証済み。二の足は踏まん。
「待ってください!」
追いかけてきた。……感情的になるな。ここは冷静に大人の対応だ。
「どした?」
「お名前を教えてください」
「後腐れなくって言ったろ」
「僕は大谷川冬馬です」
「……小富島夏樹」
名乗るなよ俺。……でもこんなピュアな眼差しを向けられて無視できるほど、俺の心は荒んでない。
「ナツキさん、僕と付き合ってください」
あー、えー?……何これ? とりあえず思考停止。
「無理ですごめんなさいさようなら」
イケメンのナマ告白怖えー。思わず棒読みかましちまった。……さすがに追ってこないか。フったし。
……えっ? なんでフったの俺。あいつがゲイである可能性だって…………いやないな。もはや雰囲気でわかってしまう自分が悲しい。
つまりこれが正解。ノンケと付き合ったって、ボロボロになって捨てられるのがオチだからな……。
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