星の子の夢

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「お前はなんでこんな大豪邸に一人で住んでんの?」 「……」 「……あぁごめん。言いたくないならいい」 「親はちゃんといます」 「えっ!?……どこに?」 「この家にという意味ではなくて、両親ともちゃんと生きているという意味です」 「なんだ……びっくりした」  いきなり家に押しかけて息子のムスコをしゃぶった後、その親に会うとか気まずいことこの上ない。 「高校生のときから、僕はこの家に一人で住んでいます」 「……そんな気がした」 「……え?」 「だから一人はだめって言ったんだよ」 「……はい」 「お前はちょっとおかしいけど、一人じゃなくなればなおるから大丈夫」 「……本当ですか?」 「うん。だから謙人とも仲良くしてくれ。俺の友達あいつくらいしかいないから」 「……わかりました」 「……心配すんな。あいつにもお前の良さを絶対にわからせてやる」 「僕の良さ……顔ですか?」 「自分で言うな。……まぁそれも大いにあるけど」 「他にもあるんですか?」 「……子供みたいに素直なところ」  まぁそれは今のところ、諸刃の剣でもあるけど……。 「そうなんですか……」 「大人のつもりでいた?」 「はい。だってもう二十一歳ですし」 「お前はこれからだ」 「はい。今後ともよろしくお願いします」 「マジメか」  こいつには教えることがいっぱいある。こんな俺だけじゃ心許ないし、やっぱり謙人にも頼るしかなさそうだ。 「お腹すきませんか?」 「すいた。お前が約束すっぽかすから」 「お肉焼きましょうか?」 「少しは反省しろよ。食うけど。……お前料理できんの?」 「夏樹さんに美味しい肉料理をご馳走したくて、最近はじめました」 「……えっ、最近? 大丈夫か?」 「手先を使うことは得意です」 「……あっそう」 「僕の将来の夢は、肉ソムリエになることです」 「……さっき星がどうのって言ってなかった?」 「星はもういいです。夏樹さんがいるので」 「……おう」  うーわー……何これ恥っずかしー。そういうこと真顔で言っちゃうとか、マジでピュアボーイだな冬馬クン。俺もこれ以上汚れないようにしないとな……。 「俺いまの仕事やめるわ」 「……えっ?」 「正直きのうの現場もしんどかったし」 「……どうしてですか?」 「もうお前以外に触るのも触られるのも嫌だから」  俺もじゅうぶん恥ずかしいこと言ってるな。でも本当のことだから仕方ない。 「やっぱり抱いていいですか?」 「肉が先」 「……くっ……わかりました」 「くっ」って言った。わかりやすさも小学生並みだな……。
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