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「んん……!」
肉うんまぁ……!
天才シェフかこいつ。もう結婚しよう。
「いかがですか?」
「美味すぎてコメントできない」
「ふふ、よかったです」
「他にも何か作れんの?」
「いいえ。今のところ肉しか焼けません」
「……あ、そうなんだ……」
本当に俺に肉を食わせるためだけに料理をはじめたんだな……。
「お前ならきっとなれるよ……肉ソムリエ」
「はい、絶対なります」
「……あ、でもお前T大生じゃん。進路とか決まってたんじゃないの?」
「はい。医学を学んでいるので将来は医師になる予定でしたが、肉ソムリエになると決めたので大学はもうやめます」
「おいおいおいおい待て待て待て。やめろ。肉ソムリエはなし。是非とも医者になってくれ」
「どうしてですか?」
「……どうしてって……お前は血のにじむような努力をしてT大医学部に入ったんだろ? 簡単にやめるなんて言うなよ」
「とくに努力をした記憶はありませんが、確かに大学生活は人と関わる場面が多くて苦痛だったので、簡単にやめるのはよくないですね。今まで我慢してきたことが無駄になる」
「……うん、そうだよ……」
天は二物も三物も与える……。
「独学は得意なので、大学に通いながらでも問題ないかもしれません」
「うん。ないない。お前ならできる」
「はい、がんばります!」
笑顔が眩しい。俺も早く次の仕事探さなきゃな……。
「大学でも相当モテるだろ? お前」
「はい」
うん、仕方ない。だって子供は正直だから。
「浮気は俺にバレないようにしてくれ……」
「浮気なんてしません」
「……ごめん。お前がイケメンすぎて卑屈おじさんになってたわ」
「夏樹さんはおじさんじゃありません」
「……まだお兄さん?」
「永遠に僕のハニーです」
「うん……?」
いきなりどうした? 笑顔が目に刺さって痛い。
「最初は誘われるがままにベッドインしていましたが、虚しくなったのでとっくにやめました」
「あぁ、わかる」
「……え?」
「……いや、何でもない」
顔怖っ。
「僕を満たせるのは夏樹さんだけです」
「あぁそう……?」
「肉にも嫉妬するくらい好きです」
「……うん、ありがと」
「夏樹さんがゲイでよかった」
「え? なんて?」
「だって女性は夏樹さんの子供が産めるから……夏樹さんが女性も好きになれるとしたら、僕はそれだけで嫉妬してしまいます」
おいおい墓穴掘ってるぞ。気づいてないっぽいけど……。
「その言葉……そっくりそのままお前に返すよ」
「えっ?」
「お前は元々ノンケだろ」
あーいかんいかん。また卑屈おじさんが発動しちゃってる……。
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