星の子の夢

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「夏樹さんは僕の子供を産みたいんですか?」 「……ん? なんでそうなる?」 「だってそういうことですよね?」 「違うよだいぶ」 「僕……やっぱり卒業後も大学に残って研究を続けます」 「えっ? なんの?」 「男性が妊娠できる時代は、もうすぐそこまできています」  なに言ってるんだろうこいつ。やっぱ頭いい奴って本当はバカなんじゃないか……? 「万が一そうなったとしても、まったく産みたいと思わないんだけど」 「どうしてですか?」  いや真顔で聞く? 俺が異常みたいな態度やめてよ。 「妊娠できたとして、お前は子供を産みたいと思うか?」 「……思わないです」 「だろ。そもそも男には母性なんて備わっちゃいねぇんだよ」 「なるほど。需要なしですか」 「なしとは言い切れないけど、とりあえず俺は求めてない」 「……わかりました」  改めて男同士の恋愛の不毛さを突きつけられた気がする。決して悪気はないんだろうけど……。 「どうしたんですか?」 「……え?」 「顔が暗いです」 「そう? 普通だけど」 「……また何か気に障ることを言ってしまったんですね」 「……違うよ。俺が勝手にマイナス思考になって落ち込んでるだけ」 「でもそうさせてしまったのは僕ですよね?」 「俺がネガティブすぎるだけだよ」 「……ちゃんと説明してほしいです」 「……そうだな」  俺ばっかり冬馬のことを知ってもだめなんだ。ちゃんと俺のことも知ってもらわなきゃ、恋人でいる意味がない……。 「俺さ……なぜかノンケばっか好きになってきたから、『やっぱ女がいいから別れて』とか、『結婚することになったから』とか……今までそんなんばっかでさ。そのたびにめちゃくちゃ凹んで謙人に迷惑かけて、それでもバカだからなかなか学習できなくてさ……」  あんまり聞きたくないだろうな。なんだかんだで冬馬はピュアボーイだから。もしかしたら怒りだすかも……。 「……そのたびにゲイであることが辛くなった。男同士でも養子もらえばいいじゃんとか思った時期もあったよ。……でも俺が求めてるのは、本当はそんなことじゃなくて……」 「夏樹さん」 「……うん」  やっぱ怒ったか……? 「……つまり夏樹さんは、男性同士の恋愛では何も生まれないと……不毛だと言いたいんですか?」 「……そこまでは言わないけど、ノンケの奴はいつそんな風に考え直してもおかしくないとは思ってる……」 「……」 「お前を疑ってるわけじゃない。ただ今までの経験上、簡単には不安が拭えない。それはお前にも知っててほしいなって……」  こんなことを恋人に打ち明けたのは初めてだ。  こんなに勇気がいるなんて知らなかった……。
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