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「生まれますよ、男同士でも」
「……また研究の話?」
「違います」
「じゃあ何?」
「ラブです」
「……えっ?」
「ラブです!」
あぁ……話してよかった。冬馬となら、俺はきっと大丈夫だ……。
「二回言ったな」
「何度でも言います」
「……うん、ありがとう。俺が卑屈おじさんになったときはまた言ってくれ」
「はい、任せてください」
どうしよう。幸せすぎて蒸発しそうだ……。
「夏樹さん、そろそろいいですか?」
「……えっ?」
「ベッドに連れていっても」
「……うん、いいよ」
「よし!」
よし! って言った。気合い入れたな。……いやお前の気合いはいらない。危険だ。
「今日はゾーンに入るなよ?」
「はい、気をつけます」
「その前にシャワー借りていい?」
「もちろんです。一緒に入りましょう」
「……えっ?」
「だめですか?」
「……いや、いいけど……っ……」
「どうして笑うんですか?」
「……いや……昨日お前が温泉の中から飛び出してきた場面を思い出しちゃって……」
「それの何がおかしいんですか?」
「……ッ……だってだいぶ前からブクブクいってて、何かと思ったらお前って……ッはは……!……もう無理。何あれ? マジないわ……」
湯の中に数分潜ってからの真顔で「ザパァ!」したイケメンとか、たぶん世界中のどこを探しても冬馬くらいしかいないし、あの衝撃ったらない。
イイ体しすぎてるのがまたシュールで、いま改めて思い出すと……ヤバい。腹筋崩壊する。
「お前の真顔と謙人のドン引いた顔の温度差がすごすぎて……もうっ……ッはー! 腹痛てぇ……!」
まぁあのときは、温泉であたたまった体が一瞬で凍りつくほどの恐怖を感じたけどな。
「俺んちの風呂場の次は温泉とか、お前ぜったい狙っただろ?」
「何をですか?」
「ウケをだよ」
「……意味がよくわかりません」
「っはは、だろうな」
冬馬はただ必死だっただけなんだと、今ならわかる。だからあんなホラーな出来事も、いつかいい思い出になる気がする。
「……すみません……」
「謝んな。すでに俺の中では笑い話だから」
「……夏樹さんが楽しんでくれたならよかったです」
「うん。でも謙人には後でちゃんと謝ろうな」
「……はい」
冬馬のヤバい部分ですら、俺はもう好きになりはじめてる。
本気で怯えてた謙人には申し訳ないけど、あのときの顔を思い出すとやっぱり笑える。
「風呂行こうぜ」
「はい」
「変なことすんなよ」
「何ですか?『変なこと』って」
「……いや、なんでもない」
やっぱり目が笑ってない……。
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