バックはまだ無理

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「そうだな……お前の言う通りだ。……もう好きにしていいよ。俺のケツが壊れない程度になら」  大事なのは「壊れない程度に」という部分だぞ。俺はもう腹を括ったから、何卒それだけは守ってくれ。 「はい……お尻を大事に、ですね……」  えっ……なんか震えてない? 声も体も。 「冬馬、やめてね? ゾーンは」 「……」  えぇ、無言は怖い……。 「ゆっくりするので……痛かったら言ってください」  おぉ、ちゃんと伝わってる。でも顔が死にそうだ。なんか悪いことしたかな……。 「ほんとにマジメ君だなぁ、お前は」  俺は起き上がり、冬馬の膝に跨った。顔を近づけただけで頬が赤くなるのは見慣れてきたけど、やっぱり可愛い。 「そんな簡単に壊れねぇから好きにしろよ」 「……っ」 「もっとエロく腰振って? あの日みたいに……」  首の後ろに腕を回し、両脚で腰を引き寄せる。冬馬の息づかいが荒くなっていく。 「ひどいです、夏樹さん……」 「それはこっちのセリフ。誰を相手にしてるかわかってんの?」 「……」 「退屈させんなよ……冬馬クン。さっさと噛みついてこい」 「……はい」 「ぅっ!」  いや、ほんとに噛むなよ……。 「僕を見てください……夏樹さん」 「……っ……」 「あなたに惚れている男の顔を……ちゃんと見て」  なんて恥ずかしいことを平気で言うんだこいつは……。 「もう黙れよ。バカ……」 「はい、僕は馬鹿です。だってもう夏樹さんのことしか考えられない……」 「……っァ……!」  大丈夫。俺はもうとっくにバカになってるから……。  肌がぶつかり合う乾いた音、ほとばしる汗……ノーマルなそれにはない、男同士の行為特有の荒々しさ。  何度も演じてきた場面のはずなのに、何もかもが違う。だって俺はこんな風に……今の冬馬のように、男を抱いたことがない……。 「……ッぁ、イっ……───!」 「……っ」  熱いものが腹の奥に広がっていく。最後の一滴まで絞り出すように腰を揺らす冬馬は余裕なさげで、その顔がうっとりするほどそそる。
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