お母さん

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「かんぱーい!」 「クソが」 「はいはい……イケメンがクソとか言わない」 「てめぇも飲めよクソガキ」 「いいんですか? 僕はあなたから夏樹さんを奪ったクソ野郎ですよ?」  あー……またはじまった。素直なのかひねくれてんのかわからんなこいつ……。 「勘違いすんな。俺は夏樹のケツがエロいから一発ブチ込んでみてぇなと思ってただけだよ」 「うーわ最低。ほらな? 謙人はこういう奴だから、おまえが心配するようなことは何も……」 「ふふ、わかります。実際エロエロですよ」 「やめろクソガキ」 「ひどい。夏樹さんまで……」  謙人には悪いことをしたと思う。謙人は優しいから、えぐい失恋ばかりしてきた俺のことが心配で、今までろくに恋人もつくれなかったに違いない。 「もう俺のことは心配しなくていいからな、謙人」 「こんなガキが相手じゃ逆に今までより心配だっつーの」 「僕は将来、医師を務めながら肉ソムリエを目指します。経済面でも肉体面でも不自由はさせません。夏樹さんを一生養っていくと誓います」 『肉体面』って何? 怖い。 「あっそ。マジでどうでもいいけど……お前は仕事どうすんの?」 「……やめる」 「……はぁ、やっぱりか。……わかった。社長のことは一緒に説得してやるよ」 「……いいの? 助かる」  やっぱり持つべきものは友達だなぁ。俺も謙人にそういう相手ができたら全力で応援してやろう。 「ねぇ……謙人って彼氏いないの?」 「……はぁ。自分が恋人できて幸せだからって今度は俺の心配か? そういうのうぜぇからやめろ」 「……ひどい。親友なのに」 「適当に遊んでるから心配すんな」 「……へぇ……」  なんだ……リアルチャラ男はお前じゃん。キャラだけ硬派とかずるい。 「いつかお父さんにも会わせてくださいね」 「……もうツッコむ気も起きねぇけど、何の話だ?」 「ふふ……いいえ」 「なんだこいつ……気持ち悪りぃな」 「フォローしてください夏樹さん。あなたの彼氏が貶められています」 「ほんと顔は良いのにいろいろ残念だよなぁ」 「……同調ひどいです」 「つーか……お前も人を殴ったりするんだな」 「……え?……あぁ……」  冬馬の顔ね。そこはツッコんでほしくなかったなぁ。なんて言おう……。 「階段から落ちました」 「言い訳ベタすぎか」 「僕は最高峰のイケメンなので、これくらいの傷なんてことないです」  わぁ……俺が言ったことをそのまま……何この恥ずかしい感じ。 「てめぇの自意識過剰なとこは気に食わねぇけど……まぁ認めてやるよ」 「……酔ってる? 謙人」 「おう」  酔ってるんかい。 「死ぬほど夏樹を好きなのはいいが、二度と男が土下座なんてすんな。夏樹に恥かかすんじゃねぇ」 「……わかりました」  うっわ……ヤバい。謙人カッコよすぎ。泣きそう……。 「謙人……冬馬ともども今後もよろしくね」 「おう」 「夏樹さんを奪ってしまってごめんなさい、謙人さん」 「……てめぇは一生うちに来んな」  性格いいのか悪いのかどっちなんだ冬馬。もはや謙人を怒らせるプロだな……。
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