お母さん

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* 「失礼します」 「ん? ふたり揃ってどうした?」 「……あの、社長……」 「ん? 三人か。誰だそいつ。新人?」 「……え?」 「……はぁ。マジかよ……」  もう。もうもうもうもう……! 「なんでいんの? 冬馬」 「夏樹さんが心配で……」 「『絶対ついてくるな』って言ったよな?」 「僕は夏樹さんについてきたわけではなく、お母さんに……」 「お母さん?……親も来てんのか夏樹」 「マジで今すぐ出ていけクソガキ」 「ひどいです……お母さん」  うぅ……カオス。せっかく覚悟を決めてきたのに、さっそく心が折れた……。 「あぁー、めんどくせぇ! 社長、夏樹が辞めたいんだと。俺は付き添いで来た。そこのデカいのは夏樹の彼氏だ」 「何ぃ? 辞めるぅ? 彼氏ぃ? 聞いてないよぉ」 「だからいま言ったろ」 「えぇ……オレに相談もナシに? ひどくない? 何年の付き合いだと思ってんのよ……」 「……すみません社長…」 「謝んじゃねぇ夏樹。そんな弱気じゃつけ込まれんぞ」 「聞こえてるよぉ謙人」 「聞こえるように言ってんだよ。……夏樹を引き止めんな。俺がそのぶん働く」 「男前がすぎるよ謙人ぉ」  わかる。マジカッコいいわ謙人。さすがは俺の母ちゃん。 「ありがと謙人。でも俺ちゃんと言う。……引き止めたら殴んぞ社長」 「ひえぇ……怖わぁ。いつからそんな不良になっちゃったの夏樹ちゅわぁんん」 「キモ。無理」 「ひぃん!……あ、わかった。そこのイケメン君の影響でしょ?……ちょっとこっち来な、あんちゃん」 『あんちゃん』って。見た目がヤーさんなだけにガラ悪すぎる……。 「何ですか? おじさん」 「おおおおおおじ……何だって? 聞こえなぁい。……ねぇ何こいつ?」 「あんま関わんねぇ方がいいぞ。イライラすっから」 「十年も夏樹さんのお尻を狙っていたところ申し訳ないのですが、夏樹さんのお尻は今後一生僕のものです。ご愁傷様です」 「ぅおいコラクソガキィ! 表出ろワレェ!!」 「ほらみろ。落ち着けオッサン。血圧あがんぞ」 「キイイィィィ!」 「おじさんではなく妖怪でしょうか……?」 「キイイィエエエェェェ!!」 「もうしゃべんな冬馬」  マジでこいつがいたら話にならねぇ……。 「行くぞガキ。あとは自分で何とかしろ、夏樹」 「うん。ほんとありがとね謙人」 「おう。ほらさっさと来い……冬馬」 「はい、お母さん」 「……ッ、殴りてぇ……」  うわぁ……血管浮き出てる。リアル怒りマークはじめて見た。血圧あがったらごめんね謙人……。
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