お母さん

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「お騒がせしてすみません、社長」 「……ふぅ。血管切れるかと思った」 「体は大事にしてください……もう若くないんだし」 「お前までそれ言う?」 「……今までお世話になりました」 「……どうすんの? いま入ってる仕事」 「金なら払います」 「あはは……ナメてんの?」  うっ、怖わぁ。でもここで引いたら負けだ。がんばれ俺。 「ナメてません。冗談抜きで……俺にはそれしかできません」 「彼氏がうるせぇから?」 「いえ、自分の意思です」 「はぁ? うっそだろぉ? お前チャラッチャラ~のチャラ男じゃん。今さらその汚ったねぇサオで操たててどうなるワケ? 笑かすなよ」 「サオ」で韻ふむのやめろ。こっちこそ今にも吹きだしそうだよ。 「ほーらなんも言えねぇ。まぁ噂は聞いてたけどよぉ……今さらケツ使えなんて酷なことは言わねぇから、サオは使えよサオは」 「嫌です」 「……あっそぉ。じゃ、ケツ使え」 「……え?」 「オレと一発ハメ撮りで許してやるよ。退職金付きでなァ」  最悪な展開だ。助けて謙人……いやだめだ。最後くらいは自分の力で何とかしないと……。 「いいですよ」 「おっ、マジ?」 「つーかそんなに俺にハメられたかったのかよ」 「……あん?」 「さっさと脱ぎな、オッサン」 「……えぇん……?」 「撮影のたびに物欲しそうなツラで見やがって。素直に求めてくりゃいつでも抱いてやったのに」 「……ぁっ、ちょっ……」 「おいおい……期待しすぎだろ。スーツの上からでもヒクついてんのわかんぞ」 「っああぁん! グリグリしないでぇ……!」 「……あ」  いつのまにか扉の前に謙人が立っていた。その後ろには冬馬もいる。 「長げぇと思ったら……なんだこの茶番」 「ちょっとぉ! 邪魔しないでくれる? いいとこだったのにぃ」 「ひどいです夏樹さん……浮気なんて」 「……いや、遊んでただけだよ」 ……ってちょっと待て。冬馬はさておき、なんで謙人が鬼の形相なわけ……? 「俺の前で堂々と男を誘うとはいい度胸してんなぁ雅也。このクソビッチが」 「……いっ、やぁ……だからほら、これは遊びで……」 「うるせぇさっさと来い。3秒以内だ。3、2、1……」 「ひいいぃ!」 「夏樹、てめぇは今日でクビだ」 「……えっ?……うん……?」  何が起きた……?  なんで謙人にクビを言い渡されたの俺。……ていうか「マサヤ」って誰? もしかして社長の下の名前……? 「夏樹」 「……はい」 「いい演技だったよ。長い間お疲れ様」 「……えっ……」 「じゃあ二人ともお幸せにぃ!」  えー……よくわかんないけどよかったー。助かったー。 「二人とも行ってしまいましたね」 「……どうなってんだ……」 「ラブを感じました」 「……らぶ?……えっ!? まさか謙人と社長が!?」 「僕にはそう見えました。つまりあの人がお父さんです」 「……えええぇぇ……」  聞いてない……聞いてないぞ謙人。ていうかいつから? まさか十年間も親友のこの俺を騙してきたのか……? 「とにかく無事に退職できてよかったですね」 「あぁ……うん」 「帰ったらたっぷりお仕置きしてあげます」 「……えぇ」  マジでただのノリだったのに。でも冗談通じないからなぁこいつ。どうやら謙人もらしいけど……。
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