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「説明してください、夏樹さん」
「……何を?」
「どうして十年間お尻を狙われていた相手のお尻をまさぐる状況になったんですか?」
何その状況うける。ていうかその前に謙人との会話をどうしてお前がぜんぶ知ってるのか説明してくれよ?
……冷静に考えてみれば、普通の話し声が浴室まで聞こえるほど俺の部屋は狭くない。まさか盗聴? だとしても今さら驚かない。そんな自分が怖い。
「喧嘩ふっかけられて頭きたから、ちょっとビビらせてやっただけだよ」
『ハメ撮りさせろ』って迫られたなんて言えるわけない。もちろんあのふざけた反応を見れば、社長が俺を試すためにあんなことを言ったのは明白……だけどこいつには100%通じない。つーか俺で遊ぶなクソ社長。
「僕には夏樹さんがとても楽しんでいるように見えました」
「……社長も言ってただろ。『いい演技だった』って」
「……はい」
「嬉しかったよ、あの言葉。トップ男優じゃないにしても、十年間どうしたらもっとエロく見えるかとか……俺なりに必死で研究してきたわけだし」
「……」
「……未練があるわけじゃないよ。お前以外とシたくないってのも本音。だから社長とのじゃれあいのことはもう許してくれ。……勝手かもしれないけど、俺にとっては最高の終わり方だったから」
「……わかりました」
「……はぁー、緊張とけたら腹へった。買ってきた肉焼いてくれよ」
「まだだめです」
「なんで?」
「お仕置きが済んでいません」
「……許してくんないの?」
「僕のお尻も触ってくれたら許します」
また何かおかしなことを言い出したな。……まぁいい。気が済むまで付き合ってやるか……。
「それじゃお仕置きにならなくない?」
「どうしてですか?」
「だって俺……普通に冬馬のケツ触りたいし」
むしろ掘りたい……とまではさすがにもう思ってないけど。
「はは、いいケツしてんなぁ。若いだけあって弾力がすごい」
「夏樹さんには負けます」
「……お前って返しがワンパターンだよな。実はバカだろ」
「そんなにいやらしく触られたら……バカにもなります」
「……何? 俺に抱かれてみたくなっちゃった?」
「僕を抱いてみたくなりました?」
可愛いのか可愛くないのかどっちなんだ……。
「もういいだろ。早く肉」
「だめです。しばらく肉はおあずけです」
「は? なんで?」
「たまには野菜も食べないと健康を損なうからです」
「そんなこと言って、本当は社長とのこと根に持ってるんだろ?」
「いいえ?」
真顔こわい。社長より謙人より、こいつの機嫌をとるのがいちばん大変そうだな……。
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