肉はおあずけ

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肉はおあずけ

 冬馬に「おあずけ」を食らってから、二週間が経った。  肉だけじゃない。あれからセックスもしていない……というか会ってすらいない。大学の方が忙しいとかで、メッセージを送ってもそっけない一言で一蹴される日々。  正直さみしい。せっかく互いの気持ちをわかりあえて、これからラブラブな毎日になると期待してたのに。  ていうか一緒に住む話は? あんなに嬉しそうにしてたくせに何なんだ。演技か?……いややめよう。また卑屈おじさんが発動しそうだ……。  俺はというと、仕事がなくなってからというもの、毎日ひとりで飲み歩いている。謙人とも何度か飲んだけど、社長とのことを聞いてもいまだにお茶を濁される。  俺はもう会社を辞めたんだし、べつに教えてくれてもよくない? そんなに口軽いって思われてるのか?  知ったところで話す相手なんかいないって、謙人が一番わかってるはずなのに……。 「あぁ……寂しい」  あらやだ、声に出ちゃった。……情けない。彼氏いるのにひとり寂しく飲んでるなんて、これじゃ冬馬と付き合う前となんも変わんねぇ……。 「まーたここかよ」 「……謙人……うわぁ謙人っ! 待ってた!」 「お前ここに入り浸りすぎだろ。ちゃんと就活してんの?」 「就活って……俺高卒だよ? 雇ってくれるとこなんてないよ……」 「……はぁ。グズが。だからって酒に逃げてんじゃねぇ」  おっしゃる通りだよ。言われなくてもわかってるよ……。 「でもどうしていいかわかんないんだもん。AV男優以外の仕事やったことないし……」 「とりあえずバイトでもいいから何かしろ。そのままだとマジで社会のゴミになるぞ」 「……はぁ。辛辣すぎ」  俺は冬馬に会いたいんだ。でもそんなことを言える勇気がない。だからもしかしたら会えるかもと思って、冬馬の伯父さんがマスターだというこのバーに通い詰めているわけで……。 「はぁ……マスター超イケメン。イケおじ最高。話してみたいなぁ……」 「お前……あのオッサンが目当てでここ来てんの?」 「……さぁ……もうよくわかんない。俺このまま捨てられるのかなぁ……」  やばい……泣きそう。もう謙人には迷惑かけないって決めてたのに……。 「はっ、何だそれ」 「……ごめん。なんか悪酔いしてるっぽいからほっといていいよ」 「……」 「水もらったら帰るから大丈……ん?」  えっ? なんで謙人にチューされてんの……? 「……やめろよ。冬馬に見られたら殺され……つーかお前には社長がいんだろ」 「あいつはただのペットだ」 「……はぁ。最低」 「お前もな」 「……は?」 「お前も同じくらい最低なことしてるって自覚ねぇのかよ?」 「……何? ケンカ売ってんの?」 「やるか?」 「……上等だよ。表出ろ」
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