星をつかむ

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「……うわ」  三年ぶりの「ザパァ!」にもこのリアクション。マジで仙人めざせるかもな俺……。 「こんばんは、ミサキさん」 「……こんばんは」  相変わらずイケメンだなぁ……いや前にも増して超イケメンじゃん冬馬。 …………えっ? 冬馬? 「ぎゃあああぁァッ!!? おおおお前っ、なななんでここにっ……!?」 「素晴らしいリアクションをありがとうございます。三分半も呼吸を止めていた甲斐がありました」  温泉の中から冬馬が現れた。三年ぶりに。 ……あぁ夢か。 「迎えにきました。ただいま、夏樹さん」 「……日本語おかしいぞ」 「花嫁修行お疲れ様です。僕のためにありがとうございます。黒髪も可愛いです」  もうだめだ。言語が頭に入ってこない。……こいつが話してるのはたぶん日本語じゃない。 「遠路はるばる来てくれたところ悪いけど、俺はもうここで一生過ごすって決めたから。帰ってくれ」 「本当ですか? 嬉しいです! ありがとうございます!」 「……なぁ、俺は真面目に言ってる」 「僕もです。大学を卒業したら迎えに行くつもりでしたが……まさか嫁入りして待っててくれてるなんて感激です」 「……」  嫁とか言い出した。ここ3年で余計に頭がおかしくなったらしいな……。 「さぁ、上がりましょう。宴の準備は整っています」 「帰れっつってんだろ。警察呼ぶぞ」 「『帰れ』ってどこにですか?」 「てめぇの家にだよ」 「ええ、だからさっき帰ってきたところです」 「……は? てめぇ……ふざけんのも大概にしろ」 「夏樹さん、温泉好きですよね?」  会話が一方通行なのも相変わらずだな。もう無視しよう。 「夏樹さん?」 「温泉は好きだよ。じゃあな」 「僕とどっちが好きですか?」 「そんなの比べるまでもねぇよ」 「どっちですか?」 「温泉」 「……そうですか。まぁ日本一の名湯ですからね……」 「もう来るなよ」 「それは無理です」 「……警察に突き出されたいのか?」 「僕の実家なんです、ここ」 「……は……?」 「……二年前に帰省したとき、夏樹さんがここで働いていることを知って……運命だって思いました。でもそのときはまだ、卒業まで長くて……夏樹さんの支えになれる僕ではなかったので、気づかないふりをして泣きながら東京に戻りました。……父と母には事情を話し、夏樹さんに息子である僕の話はしないようにと念を押しました」 「…………ちょっと待って。思考がまったく追いつかない」  確かに子供の話は一度もされてない。不自然だとは思ったけど、そういうことだったのか……。
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