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「……まぁそれはいいとして、なんで挿入までしちゃってたわけ?」
「……それは……」
「何? はっきり言えよ」
「素股の途中で……夏樹さんが『中途半端なことしてんな』ってキレてきて……すぐ挿れようとしたんですけど、なんか痛そうだったから……指でならしている間に、夏樹さんが深く眠ってしまって……」
あーもう……何なの俺。もう酒やめよう……。
「……やめようと思ったんですけど、二時間もかけてならしたのに挿れないのはもったいないかなと思って……」
「……うん、そうだよね……」
わかるよその気持ち。処女を抱くときは大変だから、がんばった後のご褒美がないとやってられないもんね……。
「それで……夏樹さんの中にチンコを」
「ねぇ待って。キミが『チンコ』って言うとなんか背中がゾゾッてなるからもう言わないでくれる?」
「はぁ……すみません」
「……いいよ、続けて」
「夏樹さんの中にペニスを」
「やめろ。余計に生々しい」
「えっと、じゃあ……」
「挿れたところまではわかったから、その後は?」
「はい……正直、その後は覚えてません」
「……は? 一番重要なとこだぞ」
「すみません……なんかゾーンに入っちゃってたみたいで、気づいたら四時間経ってました」
「……」
よかった。死んでなくて。
「夏樹さんがぐったりしていることに気づいてやめたんですけど、後ろから抱きしめていたらまた興奮してきてしまって……結局バックでもしました」
「…………あっそう」
こいつただの変態じゃん。しかもイケメンで絶倫とか……こいつが同業だったら勝ち目ねーな俺。
「その後も何度もしました。……夏樹さんの可愛い喘ぎがずっと耳から離れなくて、昨日はまったく講義に集中できなくて……」
学生か。ますます縁がない。さすがに火遊びが過ぎたな……。
「もういいよ。よくわかった。……まぁ俺も酔ってたし、べつに怒っちゃいないよ。だからもう気にするな。お詫びとかももういいから……ほんとにこれでお別れね。バイバイ」
「待ってください」
「……あんまりしつこいと嫌われちゃうよ? ミサキちゃんに」
「……本当に何も覚えてないんですね」
「え?」
「『ミサキって呼んで』って……夏樹さんが言ったんですよ? 僕が隣に座ってすぐに」
「……え……?」
うそ……じゃあ「ミサキ」って俺のこと? あの熱のこもった視線は俺に対して……?
「だいたい僕には『ミサキ』なんて知り合いはいません」
「……そっか。なんかごめん……」
「……僕も夏樹さんに弄ばれたことを怒ってはいません。脈がないのもわかってますけど……どうしてももう一度顔が見たくて、ここまで来てしまいました……」
「……」
「お仕事の邪魔してすみません。そろそろ帰ります。……夏樹さんの顔が見られてよかったです」
何これ……何これ何だこれ……?
背中がむず痒い。顔が熱い……。
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