美しき人の子【小百合】

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美しき人の子【小百合】

 そして鬼の鏡のような誠とうって変わって、さりげないフォローや優しい言葉をかけてくれる人の子、小百合。  豪鬼はこの店で働いている内に、そんな心優しき小百合に惹かれていき、いつしか異性として意識するようになった。  豪鬼は、小百合に恰好悪い姿を見せたくない一心で頑張り続ける。  ただ不器用な性格から、小百合を前にすると、どうしてもつっけんどんな態度になってしまっていた。  毎日後悔の連続だ。 「注文はいいわ、私がやるから。お客様を席にご案内して差し上げて。」  今日も小百合は、豪鬼をさりげなくフォローする。  しかし、そんな優しさにも、豪鬼の小百合に対する口は悪い。 「言われなくても分かってるよ! お客様3名様ですか? こちらの席へどうぞ。」  だが、小百合に対してきつく返答するも、お客様の前では丁寧な言葉と、顔に似合わぬ満面の笑みで接客をする豪鬼。  これこそが彼の努力の賜物であった。  いかつい顔の豪鬼が、必死に笑顔を作って挨拶をする。  その姿を見た小百合は、今日も小さく笑った。
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