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第5話 サロンでの会話
「ジークハルト様っ!」
「フィーネッ?!」
驚いてこちらを振り向くジークハルト。
「あ、貴女!何ですかっ?!ノックもせずに部屋に入ってくるなんて…!し、失礼だと思わないのですかっ?!」
バルバラ夫人は私を見て真っ赤な顔をして震えている。一方のヘルマは流石にまずいことを言ってしまったのかと思ったのか、俯いている。
「叔母様、ヘルマ。私は元気ですし、ジークハルト様に会いたくない等一度も思ったことはありません」
言いながら部屋に入り、ジークハルトの元へ行くとドレスの裾をつまんで挨拶をした。
「お待たせしてごめんなさい。ジークハルト様」
するとジークハルトは笑顔で私を見た。
「ああ…良かった。最近会えない日々が続いていたから心配していたんだ。何回か君に会いに来た事があったのだけど、今日は出掛けているとか、家庭教師が来ている日だからと言われてタイミングが合わなかったから、代わりに夫人とヘルマ嬢が僕の相手をしてくれていたんだよ。だけど…今日は会えたね」
「…え?」
その言葉に私は耳を疑った。ジークハルトが私に会いに来ていた?それなのに私の元には知らされていない。
まさか…!
2人を振り返るも、視線を合わせようとはしない。
やはりそうだったんだ…っ!
握りしめる手に力がこもる。叔父家族は私を離れに追いやる事で、ジークハルトと私が会う事を遮断しようとしていたのだ。その代わりにヘルマを…!
悔しさで俯くと、ジークハルトが心配そうに声を掛けて来た。
「どうしたんだい?フィーネ。やはり具合が悪いのかい?」
「え、ええっ!そうよっ!ほ、ほら。ジークハルト様もこのように仰って下さっているのですから、貴女はもう部屋に下がった方がよいわよ?」
バルバラ夫人が慌てた様に言った。
「そ、そうよ。ジークハルト様のもてなしなら私達で出来るから!」
図々しいヘルマの言葉など耳に入れたくも無かった。
「…部屋に下がる?どの部屋に下がれと言うのですか?離れに追いやられた私の部屋の事ですか?それとも以前使用していた自分の部屋に戻してくれるのですか?」
私は顔を上げるとバルバラ夫人に言った。
「なっ…!」
夫人の顔が青ざめる。
「え?どういう事なんだい?フィーネ。君は今離れの部屋に住んでいるのかい?」
ジークハルトは驚いた様子で私を見た。
「はい、そうです。それだけではありません。他にも色々…」
「フィーネッ!!」
バルバラ夫人が大きな声で私の名を呼ぶ。
「少し黙っていて下さいっ!僕は今、フィーネと話をしているのですっ!」
するとジークハルトが立ち上がり、声を荒げてバルバラ夫人に叫んだ。
「…っ!」
その迫力にたじろぐ夫人をジークハルトは一瞥すると、私に優しい声で語りかけて来た。
「フィーネ、外で少し話をしないかい?」
「ええ。ありがとう」
笑みを浮かべて返事をすると、何故かヘルマが席を立った。
「私も!私も一緒に行くわっ!3人で庭を散策しながらお話しましょう!」
しかし、ジークハルトは冷たい目で言う。
「悪いが、フィーネと2人で話がしたいんだ。君は来ないでくれ」
「…そ、そんな…っ!」
青ざめるヘルマに見向きもせず、ジークハルトは言った。
「行こうか?フィーネ」
「はい」
そして私はジークハルトに連れ出され、部屋を出た―。
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