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第14話 誰も来ない部屋
私は離れの部屋で黙々と部屋の片づけを行っていた。バスルームの小物を全て収納ケースにしまったり、テーブルの上の物を片付けたり…それなのに一向に1人の使用人も手伝いに現れない。
既にあれから2時間が経過していると言うのに…。
「何故誰も手伝いに来てくれないのかしら?1人で荷物を運べないのに…」
床の上に座って荷造りしながら溜息をついた時―
「フィーネ様?何をされているのですか?」
扉の外から声が聞こえた。みると開け放たれた扉の外にはユリアンが立っていた。
「まぁ、ユリアン。貴方が手伝いに来てくれたの?入って来てくれる?」
「はい、フィーネ様」
声を掛けるとユリアンは部屋の中に入って来た。そして部屋の中を見渡すと言った。
「フィーネ様。一体どうされたのですか?荷造りなどなさって…何処かへ行かれるのですか?」
「え?叔父様から何も話を聞かされていないの?」
「何の話でしょうか?」
ユリアンはわけが分からなと言う感じで首を傾げる。
そ、そんな…。
「私、今日から離れの塔から本館へ移ることになったのよ?それで荷物整理をしていたのだけど…叔父様が言ってたのよ?使用人達を呼んで手伝わせると」
「いいえ?そのような話は初耳ですし…いま、離れの使用人たちは殆ど全員本館にいますよ?突然旦那様が本館の大掃除を始めるから使用人を全員集まる様に言われたのです。私は今本館で足りなくなった掃除用具を取りに来たのです」
「な、何ですって…?だって叔父様は…」
まさか、叔父様は私を離れから移すつもりは無かったの…?始めから騙すつもりで…?なら、何故ジークハルトはここへ来てくれないのだろう?叔父様を説得してくれなかったのだろうか?
「フィーネ様?どうされたのですか?顔色が悪いですよ?」
ユリアンが心配そうに声を掛けて来る。
「私…行くわ…」
「え?行くって一体どこへですか?」
「本館よ!叔父様の所へよ!」
私はそれだけ言うと立ち上がり、急いで本館目指して走り出した。
「待って下さいっ!フィーネ様っ!私も行きますっ!」
ユリアンが追いかけて来た。
「ユリアン…貴方は掃除用具を取りに来たのでしょう?私の事は大丈夫だから自分の仕事をして?」
「ですが…」
「お願い、叔父家族に逆らった使用人たちはクビにされてしまうわ。今日も3人メイドがクビにされたのよ」
「え?メイドが…ですか?それは妙ですね。誰もクビになどなっていないはずですよ?」
私は足を止めるとユリアンを見た。
「そんな…ほ、ほら。私を北塔の倉庫に閉じ込めた3人のメイドよ」
「ああ、彼女達ですか?変ですね…先程ヘルマお嬢様と仲良さげに話をしている姿を本館で見かけましたよ?」
「な、何ですって…?」
私はその言葉に顔が青ざめていくのが自分でも分った。
ま、まさか…あれはお芝居だったと言うのだろうか?
全員グルだった…?私を騙す為の…。
それでは、ジークハルトは?彼も騙されてしまっているのだろうか?!
「ジークハルト様っ!」
私は彼の名を口にし、再び本館目指して走り出した。
真実をこの目で確かめる為に―!
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