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第18話 衝撃の夜
真夜中―
ふと何故か突然私は目が覚めた。何処からか風が吹いている気配を感じたからだ。
ゆっくり起き上がると、バルコニーへ続く窓が大きく開け放たれ、レースのカーテンが風で揺れている。空には大きな満月が浮かび、部屋の中が青白く照らし出されていた。
「え…?何故窓が…?」
するとすぐ近くで男の声が聞こえた。
「何だ、起きたのか?そのまま大人しく寝ていれば良かったものを」
「えっ?!」
驚きで振り返ると、そこにはマント姿に口元をスカーフで隠した黒ずくめの人物が立っていた。
そして手には短刀が握られている、
「だ、だ、誰っ?!」
「俺か?俺はある人物からあんたを殺すように言われて雇われた者だよ」
その言葉に衝撃が走る。
「え…?わ、私を殺しに…?!」
そんな…っ!
「う、嘘でしょう…?」
ガタガタ震えながら私は男を見た。
「嘘なんかついてどうする?ちゃんーんと依賴料も貰っているんだ。まぁはした金だけどな。あんたみたいなお嬢様、造作なく殺せるからだろう?」
「な、何ですって…?」
そんな…お金で…しかもはした金で殺されるなんて…!
「だ、誰…?だ、誰が私を殺そうと…?」
震えながら尋ねると男は肩をすくめた。
「あいにく、それだけは絶対言えないな…恨むなら俺ではなくあんたを雇った人間を恨むんだなっ!」
そして男は短刀を振りかざした。
「いやあああっ!」
とっさにベッドの上に置かれたクッションを構えて目を閉じた。
次の瞬間―
ザクッ!!
何かが突き刺さる音が聞こえた。
「チッ!」
男の舌打ちが聞こえたので恐る恐る目を開けると、そこにはクッションにざっくりと突き刺さったナイフを握りしめていた男が立っていた。
「くそっ!」
男は忌々しげ私からクッションを奪って放り投げた。
「キャアッ!」
ベッドから急いで降りて逃げようと背を向けた時…。
ガッ!
いきなり両手で首を閉められた。
「グッ!」
途端に呼吸が出来なくなる。男は私の首をギリギリとしめつけながら言う。
「へへ…悪いな…あんたに生きていられると困る人間たちがいるんだよ…ここで死んでくれ…」
「あ…」
苦しい…痛い…息が出来ない…誰が私を殺そうとしているの…?
いや…死にたくない…生きたい…こ、こんなところで…死んでたまるものですか…!
すると次の瞬間―
突然自分の身体が焼けるように熱くなった。まるで身体の内部から炎が吹き出しているのではないかと思うほどに熱を感じた。そして…。
「ギャアアアアアッ!!」
背後で突然耳を覆いたくなるような悲鳴が起こり、首を締めていた手がするりと解かれる。
「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!!」
首が楽になり、私は酸素を取り入れようと大きく深呼吸した途端、激しくむせこんだ。
「ギャアアアッ!!熱いっ!熱いっ!」
背後で男の叫び超えが続いている。
「…?」
床に跪き、右手で首を押さえて咳き込みながら後ろを振り返った私は驚きで目を見開いた。
そこには火だるまになった男が絶叫しながら床を転げ回っていたのだ。
「…!!」
あまりにも恐ろしい光景に私は思考が止まりかけた。
「た、助け…あ、つ…い…い…いた…だ、誰か…!!」
「あ…」
思わず目を覆いたくなるような光景に声が震える。
男は炎に包まれながらもがいている。頭髪は焼かれ、皮膚は焼けただれ、部屋の中は強烈な異臭に包まれていた。
な、何なの…?これは…?
叫びたいのを口元を抑えて堪え、恐怖で涙を流しながら私は男が炎で焼かれていく様をただただ見つめていた。
「ギャアアアアアッ…!」
部屋に肉の溶け落ちた男の断末魔が響き渡った。
「!」
あまりの恐怖に…とうとう私は耐えきれず…その場で気を失ってしまった―。
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