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第23話 ヘルマの乱入
コンコン
部屋の整理をしていると扉をノックする音が聞こえた。
「はい？」
「フィーネ様。私です、ユリアンです」
「え？ユリアン？どうぞ入って」
「はい、失礼致します」
カチャリと扉が開かれると、トレーに食事を乗せたユリアンが現れた。
「お食事をお持ちしました」
「まぁ…ありがとう」
トレーの上には湯気の立つスープにパンケーキ、サラダ、プディングが乗っていた。どれもとても美味しそうだった。
「申し訳ございません…」
ユリアンは私を見るなり、頭を下げてきた。
「え？何故謝るの？」
「いえ…お昼をとっくに過ぎた時間に…しかもまるで朝食のようなメニューしか御用意出来なくて…」
「そんな事無いわ。私にしてみればこれはご馳走だわ。ありがとう、ユリアン」
笑みを浮かべて礼を述べるとユリアンが頬を赤らめた。
「いえ、フィーネ様のお役に立てれば光栄です。それではテーブルの上に運びますね」
「ありがとう」
ユリアンは部屋の中に入ってくると、中央に置かれた２人用のテーブルセットの上にトレーを乗せ、足元に置かれている荷物に目を止めた。
「フィーネ様。まさか…お１人で荷物整理をされていたのですか？」
「ええ。私には…専属メイドがいないから」
するとユリアンは眉をしかめた。
「何て酷い話なのでしょう。本来、このアドラー家の正当な主人はフィーネ様なのに…あの方々は…おまけにヘルマ様には３人の専属メイドがついているのですから」
「ねぇ…その３人のメイドって…やっぱり私を北の塔にある倉庫に閉じ込めたメイド達なの？」
「…はい…その通りです…」
ユリアンは目を伏せた。
「そう…あの３人はクビにすると言っていたのに…しなかったのね。と言う事は罰もあたえていないのでしょうね…」
やはり皆して私を騙したのだ。もう怒りも悲しみも湧いてこなかった。
「フィーネ様…とりあえず今はお食事を取って下さい。折角のお料理が冷めてしまいますから。食事が終わる頃にまた伺います」
「ええ…そうね。ありがとう」
「いいえ。これが私の約目ですから。それでは失礼致します」
ユリアンは頭を下げると部屋を出て行った。
パタン…
扉が閉ざされ、１人になると椅子に座り…食事を始めた。ユリアンが用意してくれた食事は久しぶりに美味しかった。私は今まで自分がどれほど質素な食事を口にしてきたのかを感じた。
「ユリアンに感謝しなければね…」
私はゆっくり食事を味わった―。
＊＊＊＊
丁度食事を終えた頃だった。
ガチャッ！！
いきなり乱暴に扉が開かれ、振り向くと険しい顔つきのヘルマがそこに立っていた。ヘルマは部屋の中にズカズカと入って来ると、いきなり私の右頬を平手打ちしてきた。
パンッ！
あまりの事に一瞬何が起きたか分からなかった。
「な、何するのよっ！ヘルマッ！」
叩かれた頬を右手で押さえ、抗議した。
「それはこっちの台詞よっ！フィーネッ！あんた、お父様とお母様に何をしたのよっ？！」
「一体何を言ってるの？私は何もしていないわ！」
「嘘言わないでよっ！お母様はベッドに潜り込んで震えているし、お父様は昼間からお酒を飲んで荒れているのよ？！それにジークハルト様だって…」
「え？ジークハルト様がどうしたのっ？！」
するとヘルマは何かまずいことを口走ったとでも思ったのか、両手で口を押さえた。
「答えなさいよっ！ヘルマッ！」
「煩いっ！あんたに何も話すことは無いわっ！それより離れに戻りなさいよっ！ここは私達の城なんだからっ！」
そして私の髪を思い切り引っ張った。
「い、痛いっ！やめてっ！」
あまりの痛みに目に涙が浮かぶ。
「本当にあんたは髪の毛が真っ黒ね！この魔女めっ！」
魔女…その言葉に一瞬身体がカッと熱くなる。次の瞬間―。
「キャアッ！！」
突然ヘルマの身体が一瞬浮き上がり、後方に飛ばされて床の上に叩きつけられた―。
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