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第8話 閉じ込められた私
どの位意識を失っていたのだろうか―。
「う…」
ゆっくり目を開けると私は冷たい床の上に倒れていた。頭を押さえながら身体を起こし、周囲を見渡した。そこは薄暗い部屋で天井が見上げる程に高かった。無機質な石の壁は亀裂が所々に走り、年代の古さを感じさせる。部屋の空気はじっとりしており、少しかび臭い匂いが部屋中を満たしている。室内にはマットレスや梯子、埃をかぶったテーブルや椅子等、どう見ても不用品と思えるガラクタばかりが乱雑に置かれている。
「かび臭い…それに肌寒いわ…」
自分の両肩を抱きしめながらぽつりとつぶやき、外の様子が気になった。
「窓の外の景色が見えればいいのに…」
窓は私の背丈よりも高い位置にあり、とてもではないが手が届かない。そしてその窓からはオレンジ色の明かりが差し込んでいる。その時になってここがどこなのか記憶が蘇って来た。
「こ、ここは…不気味な倉庫だわっ!」
私は恐怖で身体を震わせた。そもそも何故この倉庫が恐れられているかというと、倉庫の建てられた場所が不気味な林の近くだと言うだけが理由では無かった。
実はこの倉庫にはその昔、ここで首つり自殺をした貴族の亡者が怨霊となって出没するとの噂まで囁かれていたのだ。それ故、人々は誰もがこの場所に来ることを嫌がっていた。
「早く…ここから出なくちゃっ!」
急いで私は扉に駆け寄り、冷たいドアノブに触れてガチャガチャ回すが、全く開く気配が無い。
「開かない…」
恐らく外側から鍵を掛けられたのだ。鍵を掛けた人物達は言うまでもない。あの3人のメイド達に違いない。
「今外は夕方…と言う事は恐らくもうすぐ夜になるわ…。そ、そんな…っ!」
夜になると亡者たちが活動する…と言われている。
私の目に恐怖で涙が滲む。
ドンッ!
ドンッ!
私は必死でドアを叩いた。
「お願いっ!誰か来てっ!助けて!ここを開けてよっ!」
しかし、ここは誰もが恐れている倉庫。そのうえ、もうすぐ夜になるのだ。助けが来るはずもない。おまけに私は叔父家族だけでなく使用人達からもつまはじきにされている。私の事を気に掛ける人物は誰もいないし、探そうと思う者すらいないだろう。
ましてやヘルマやヘルマを慕うメイド達が私の行方について誰かに口を割ることすら無いだろう。
「そ、そんな…っ!」
私は絶望した。きっとこのままでは私はずっとこの倉庫に閉じ込められたままになってしまう。それどころか真夜中になり…怨霊が現れたら…?
「お、お願いっ…!ここを開けて!誰かーっ!!」
私は扉を叩いて叩いて…泣き叫び…ついにその気力まで無くなった―。
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