すべての始まり

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すべての始まり

「えっ・・・ハヤト・・・?」 夏休みを控えた7月半ば。 人気のない蒸し暑い日が暮れかけた教室。 僕は片想い相手に花を吐くところを見られた。 ーーー 僕が花を初めて吐き出したのは高校2年生の時。 友達たちとだべっていた時、急に吐き気がしてトイレに駆け込んだ。 唾液と共に吐き出したのは黄色の水仙だった。 「・・・・は・・・??」 最初の印象は冗談だろという感じ。 だって花を食べた記憶はない。水仙なんて以ての外だ。 どうしていきなり花が出てきたんだ??? 腹の中で生成されるわけはあるまいし。 調べてみたら「花吐き病」というものが出てきた。 「片思いをこじらせたら発病する...?」 思い当たる節しかなかった。 同じクラスのツムギ。 高校2年になって同じクラスになり、すぐに意気投合した。 明るくて、人当たりも良く、ルックスもいいツムギ。 無自覚で好きになっていた。 しかも治癒方法が両想いになること。 「無理・・・だろうな・・・」 ツムギには好きな人がいる。 ふざけながら、その人のことを聞いても、「内緒」としか教えてくれない。 きっと彼にお似合いのかわいい女子なんだろう。 でも、その相手のことを話すツムギは本当に幸せそうな顔をする。 そういう顔を見てしまうと彼に自分の想いを伝えるのがもっと億劫になってしまうのだ。 もうこのままこの病気と共に生きていくしかない、そう決心を固めていた。 ーーー (その矢先にこれかよ・・・) この体質を恨みながらも僕は花を吐き出し続けていた。 汚い自分の嗚咽と共に水仙の花が唾液にまみれて床に落ちていく。 止まってくれと願いながらもどうしようもできずにただ吐き気に身を任せていた。 彼は僕に駆け寄った。そして、背中を優しくさすった。 彼の手の熱が背中から伝わって体がもっと熱くなる。 耳元でツムギの「大丈夫、大丈夫だから・・・」という少しかすれた声がする。 ようやく落ち着き、荒くなった息を整える。 息を整えながら、僕は同時にツムギになんて言い訳をしようか考えた。 しかし、突然のことで頭の中は真っ白だった。 胃酸でヒリヒリしている喉の痛みを押さえつけるように1度唾を飲み込み、 ツムギの顔を見た。
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