Episode0-1 Side・田浦忍

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 約束を交わしただけではなく、連絡先まで交換できたから更に舞い上がった。午後いちばんでウキウキしながら担当作家の下に原稿を取りに行くと、あまりの浮かれぶりだったのだろうか、いいことあったのかと聞かれたので、はい、と力強く答えておいた。  その後は喫茶店で別の作家と打ち合わせだった。その最中も脳内は薔薇色で、サクサクアイディアが出てきて打ち合わせはあっという間に完了――と行きたいところだが、全くもってちんぷんかんぷんなアイディアばかり提案したため、何の進展もないままに終わってしまった。 「お疲れ様でした」  作家先生を見送ったので直帰可能だが、帰社してもうひとつ仕事を片付けようと思った。  明日は何処へ飲みに行こうかな。西島さんの好きな食べ物や飲み物を聞いて、気の利いた洒落た店をセッティングしなきゃ――彼女の事ばかりが頭を占めていたせいか、喫茶店を出た所でさっき別の作家から預かった大切な原稿を、その場にうっかり忘れて帰る所だった。寸前で手に何も持っていない事に気が付いたので助かったが、紛失なんて事になったら大事(おおごと)だぞ!  そんな事をすれば、明日の西島さんとの約束が無くなってしまう!!  
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