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「おー、イケるクチじゃん。さー、飲もう飲もう」
佐田は俺にどんどん酒を勧めてきたが、ペースを崩すと酔っぱらってしまうと思い、量をコントロールしながら飲んだ。しかしアルコールが入ると気が大きくなる。普段あまり喋らない俺が、陽気な気分になったのであれこれ話した。
好きな小説、作家、これからの出版業界があるべき姿ついて等、饒舌に語った。気が付くと周りの連中とすっかり打ち解けていて、『田浦さん』呼びから『田浦』と呼び捨てになる程の仲になっていた。
「もう一軒行こうぜぇー」
佐田を筆頭に、中須や他にも男メンバーが集まって二次会をやった。大先輩の大崎敦とも仲良くなり、みんなが呼んでいる『アツさん』とニックネームを呼べるまでになったので、思い切って彼も二次会へ誘ってみた。彼は鋭い眼光を奥に引っ込め、豪快に笑って俺たちに付いて来てくれた。
アツさんの容姿は、白髪と灰色混じりのもやしの根っこみたいなくちゃくちゃの頭をしていて、四角い骨格が張った顔は彫が深くて鷲鼻。普段はとても鋭い眼光を向けているが、それは獲物を狙う鷲のようなものだ。ジャーナリストの経験もあり、他所の出版社を渡り歩いてきた彼が語る話は、俺にとって目から鱗が落ちるようなものばかりだった。
もっと彼と話したいと思い、自ら切り込んだ。
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