みっつ数えて

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みっつ数えて

みっつ数えて目を開けたら すべて元通りになっていないかな。 少年はそんなことを思っていた。 とにかくここが嫌いだった。 暗くて狭苦しい。 楽しい事は何もない。 家も学校も……、 近所の友達も……、 パパもママも……、 全部なくなってしまった。 少年は試してみることにした。 みっつ数えて目を開ける。 そうしたら、きっと……。 少年は目を閉じた。 「いち(オディーン)にー(ドヴァー)さん(トリー)……」 みっつ数え終えても、 少年の目は開かれなかった。 瓦礫に埋もれ、そこで息絶えていた。 抜けるような青空だった。 空爆の音が鳴り響く。 周囲にはただ、 破壊された街だけが広がっていた。
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