3. おとぎ話(聖女召喚しない女神)

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3. おとぎ話(聖女召喚しない女神)

   滅びゆく地にできること  むかしむかしあるところに光り輝く神がおりました。彼女は命豊かな青き惑星(ほし)を無限に広がる闇へと落とし、緑を育み花を咲かせいくつもの命を生み出しました。胸に抱く理想は“愛”。全のために一があり、一のために全がある──(みな)が幸せになれる世界を実現したかったのです。  人間を生み出したのは、善なる心の発展を知恵持つ者らに託すためです。彼らは彼女の想いに応え愛を育んでいきました。けれどそれらは極めて限定的なものになってしまったのです。  家族のために他者の持ち物を奪います。村のために他者の土地を奪います。愛を得るために兄弟姉妹を蹂躙してまで玉座を求め、己の価値を過信しては他者の愛を搾取します。  異なる形を持つ者逹は彼らに住み処を奪われます。命の価値は低いです。人間すべてが冷たいわけではありませんが、自分たちが繁栄するためならば多少の犠牲は致し方ないと思ってしまうのです。  いくつもの国が生まれ人は増えていきました。政治が整い経済が流れ科学は発展していきます。生活は豊かになりましたが自然は破壊されていきました。自然界には存在しない汚染物質が数多く生み出され命が次々に奪われていきます。過ちに気づいた人々が問題の解決に乗り出しますが、惑星は限界まで追い詰められてしまったのです。 「もはや一刻の猶予もありません。人間を滅ぼしましょう」  進言するのは影より支えし神です。確かに彼の言葉を聞けば光り輝く神の世界は救われるでしょう。  だけれど彼女はかぶりを振ります。人間も自らが腹を痛めて生んだ愛し子に変わりないからです。悪に惑いつつも愛をもって生きようとしている、彼らの道を閉ざすことなどできるはずがありません。  影より支えし神も強くは言えません。彼にとっても人間は愛しき子供たちだからです。  少し考え代替案を提示します。 「それならば異世界より聖なる者を召喚しましょう。汚れきったこの世界を浄化してもらうのです」  光り輝く神は手を叩きました。それなら誰も傷つきません。聖なる者とて例外ではありません。他世界には、異なる世界で人生をやり直したいと望む魂が溢れているのです。その中から優れた者を選び出し、世界を清めてもらう変わりに手厚くもてなす──どこの世界でも行われている平和的な解決法です。  だけれど地より育む神は疑問の言葉を呈しました。
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