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4. 真夜中(奴隷少女と少年兵)
ある命の輝き
激しく揺すられ飛び起きたのは真夜中だった。緊張している養父母。外からは悲鳴と怒号。あたしは養父に腕を掴まれタンスの中へ押し込まれた。
なに、これ? あたしのせい? あたしが助けを求めたりしたから……!?
あたしは奴隷だったのだ。奴隷の母と主人との間に生まれ、奴隷としてこき使われてきた。母は既におかしくなっていて、父はこちらを見向きもしなかった。あたしは奥様と坊っちゃんにいびられ続け、年頃になると坊っちゃんに犯された。
そのまま首を締められた。抵抗するなんて生意気だって。あたしは手探りで石を見つけ、必死になって坊っちゃんの頭を殴り続けた。動かなくなると逃げ出した。
夜でよかった。村外れの家だったので森が近かったのもよかった。遭難したけど人に会った。捕まるかとも思ったけど助けを請うと手を差し伸べられた。
奥まった森の集落に運び込まれた。手当てを受け食事を与えられた。子供がいないという夫婦に娘として迎え入れられ──どうしてそこまでしてくれるのかと聞いたら笑われた。当たり前だと。命は等しく尊いものなのだからと。
ここは異教徒の隠れ集落だったのだ。彼らの神は“平等”を説いていた。
共に過ごした数日間は天国にいるようだった。初めて大切にされた。抱き締めてもらえた。母を置いてきてしまった罪悪感はあったけど、戻ったって殺されるだけ。集落の存在を知らせてしまう危険もあるし、みんなに迷惑はかけられない。
全て言い訳だった。本当に迷惑をかけたくないなら出て行くべきだったのに。主人の息子を殺した奴隷が放っておかれるわけないのだから。捜索されれば集落を見つけられ、集落ごと襲われるのは少し考えれば分かることだったんだから。
養父母は問答無用で殺された。あたしはあっさり見つけ出され集落の入り口まで引きずって行かれる。てっきり父と奥様が待ち構えているのかと思ったけど、そこにいたのはカンテラを持つ少年兵だった。
まだ成人したばかりなのではないだろうか? 鎖かたびらと剣が随分と重そうで、怯えきって荒い息をついている。あたしを引っぱってきた兵に肩を叩かれ小さく悲鳴を上げた。
「さぁ、連れてきてやったぞ! この異教徒を殺してみろ。あの騒ぎには入れなくとも、これくらいならできるだろう?」
「で、でも……!」
「俺の親切を無下にするなよ? それとも……」
「ひっ……!?」
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