傍観者

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 エンドロールが流れると、劇場にいた観客たちは皆エンドロールを全て見ずに外に出る。劇場に残ったのは男と、男女のカップルだけだった。男はチラッと隣を見ると、さっきからずっと無言で手を繋いでいるカップルに若いな、と感じる。  子供の男女が虐待する両親を殺し、出会い、逃避行をする物語。なんて残酷な物語なのだろう。応援したいようで、できない。応援してしまえば倫理的に反するし、応援しなければそれはそれで心が痛む。一体、どちらの選択が正しいのだろう。男は映画を観ている間、ずっとそんなことを考えていた。  エンドロールが終わり、劇場が明るくなる。男は空になった飲み物を持って、また男女のカップルを見た。男女のカップルは、まるで静かに眠っているように肩を寄せ合い、手を握っている。映画で寝る人はいると聞いたことはあるが、まさかこの作品で寝るなんて。あまりの怖さで眠ることなんて有り得ないと思っていたのに。  起こそうか否か迷ったが、後々スタッフが来るだろうし、放っておくことにした。男は階段を下り、劇場の外に出る──  残った男女は誰もいなくなった所で目を開けると、真っ白なスクリーンを見た。 「映画ってだよね」  女はそう言うと、飲み物を空にする。男は頷くと「創造物全てが残酷だよ」と付け足した。 「観客も残酷」 「そうだね。この物語だって、ただ見ているに過ぎない。見て何か考えていても、あくまでこれはストーリー。フィクションとしか思えない。として見てるんだ」  男は冷静に言うと、立ち上がった。二人はまだ手を握っている。放そうとしない。放れようとしない。お互いに執着するように手を握っていた。 「残酷だね、この世の中は」 「そうだね」  二人はそんな会話を劇場に残しながら、後にする。誰もいなくなった劇場は、しんと静寂に包まれていた。
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