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母の声が耳に入らないらしい二人は、早速テーブルに転がる金平糖をひとつづつ寄り分け始める。
ピンク
薄緑
白
黄色
結も智も、同じ動作で、小さな星型のカラフルな粒を、等間隔に並べている。
「なにしてるの?」
「同じ数かどうか調べるの!」
「そう!確かめるの!」
二人はほぼ同時に答えた。
ええ? 金平糖の数まで?
尚美は呆れて声も出ない。
おばあちゃんが孫たちが喧嘩しないように気を使ってくれても、金平糖の中身まで同じにはできないよ。
結局、色によっても数も違い、その上、一粒、結の方が多く、二人はつかみ合いの大喧嘩になってしまった。
「それは大変だったねえ」
電話の向こうで祖母の陽子の声が笑っている。
「自分のが少ないって、智は泣き叫ぶし、大変だったんだから」
「たぶん重さで入れてるんだろうけど、さすがに一つずつまで数えるとは思わないからね」
「私もよ、お母さん」
盛大なため息。
「今度からは平和に過ごせる数の分かるお菓子にするしかないねえ」
電話の向こうの祖母の陽子は、人ごとのように呑気な声だ。
ああ、この子育ての難しさよ。――
尚美は再びため息をついた。
そして、リビングを振り返ると、お風呂から上がったばかり姉妹の結と智は、温かな春の海辺に寝そべるフワフワの白い毛に包まれた仔アザラシのように、ソファーの上で白い毛布にくるまって、二人仲良く寄り添い眠っていた。
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