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「もう……気の早い子たちね」
桜模様で彩られた紙袋。
祖母が毎月来るたびに、自宅近くの和菓子屋で買ってくる菓子セット。季節感を大事にしている店で毎回来るたびに紙袋の模様が違う。祖母のお気に入りの店。月に一度行く度に、馴染の店員が、孫のためのお菓子を詰めてくれるらしい。
母の直美が双子の手の届かない戸棚からその菓子袋を取り出した。
「わあい!」
「お菓子!」
母の手からむしり取り、二人ともリビングルームに飛び込むと紙袋の中身をテーブルに広げた。
包装紙にそれぞれ包まれたレーズンの乗ったパイと大きなおせんべい。
そして透明な巾着に入った金平糖が登場する。お菓子というよりおもちゃのビーズのようだ。
「きれい!」
「ほんと!」
金平糖はこの春の季節に合わせて、ピンク色、薄緑色、白、黄色と、明るいパステルカラーだった。
「食べるなら少しだけにしなさい。もうすぐ夕飯にするから」
夕飯の支度を始めようと、冷蔵庫を開けながら母の直美が注意する。
だが双子は母の声も聞こえず、ただ互いに睨み合った。
「もしかして結ちゃんの方が多いんじゃない?」
「ううん、智ちゃんの方が多いよ!」
「もう!おばあちゃんが帰ったと思ったら!いいかげん二人とも、喧嘩は止めなさい!おばあちゃんが同じにしてくれたはずでしょ!同じものが入ってるよ」
「違うよ!」
「違う!」
二人は同時に、巾着の中の金平糖をそれぞれテーブルの片隅でぶちまけた。
「なにしてるの!」
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