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 「リクちゃん、家庭教師をお呼びなさい!   この成績じゃ、お受験に間に合わなくてよ」 小学5年生の三原リクは教育熱心な母親にそう告げられた。 悲憤のままに握り締められるテスト用紙。 赤字の"30"が見るも無残にしわくちゃになっていた。  三原家は先祖代々エリート街道を進んできた。 父も母も祖父母も、ひいては曾祖父母までもが一流大学を難なく卒業している。 そこへ行き着くまでには中学受験を乗り越えており、 自然とリクも敷かれたレールに従って人生を歩もうとしていた。 ところが、彼の成績は思うように伸びなかった。 特に算数が不得意で、テストは良くて40点取れるかどうか。 言いつけで机の前に座らせられても、今一つ勉強に身が入らない。 鉛筆を持って数分経てば、床に寝転がってゲームをしたり、 漫画を読んだりしてしまっていた。 芳しくない息子の現状を見兼ねた母親が、 ひとまず一日だけ家庭教師を依頼したのであった。
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