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プチトリアノン
「お母様」
わたくしは声をあげその場で泣き崩れてしまった。
「マリー・テレーズ」
どれだけ時間がたったことでしょうか?わたくしを呼ぶ声で意識を取り戻しました。周りを見渡すとわたくしは庭園におりました。
薔薇の花のアーチ、澄みわたる湖に舞うように泳ぐ白鳥。
ここは少女時代に過ごしたお母様のお気に入りの離宮。プティ・トリアノンとそっくりだわ。
「マリー・テレーズったら。うたた寝をしてしまったのですね。」
「お母様?!」
目の前には死んだはずのお母様がおりました。
「マリー・テレーズ。リボンがまた取れてますよ。」
髪からとれかけた白いリボンをお母様は直してくれる。
「これで素敵なプリンセスになりましたよ。テレーズ。」
お母様はわたくしに鏡を見してくれる。
「お姉様!!」
「テレーズ」
「王女様」
お母様だけでなく、シャルルにお父様、ノワイユ伯爵夫人、エリザベス叔母様もいらっしゃるではありませんか。
「王妃様」
酪農家がお母様の元へやってくる。
「朝食の準備ができました。」
「今日の朝食は何かしら?」
「本日はパンと取れたてのミルクから加工したチーズでございます。」
「さあ、行きましょう。マリー・テレーズ」
お母様に声をかけられわたくしも後に続こうとしました。
「待って下さいお母様!!」
気がつくとわたくしはベッドの植えにいた。
周りには女官達がわたくしを見下ろしている。
「マリー・テレーズ王女様」
今のは夢だったのね。
「王女様お身体は大丈夫ですか?」
「随分とうなされておりましたよ。」
女官達は心配そうにわたくしに声をかける。女官長が言うにはわたくしの声を聞き部屋に駆けつけたらわたくしは床に突っ伏していたそうなのです。
「王女様。こちら王女を傍らに落ちてました。」
「これは」
女官長が差し出したのはお母様の形見の白いリボンでした。
「ありがとう。わたくしはもう平気よ。そうだわ。紙とペンを持って来てくださる?」
わたくしは手紙を書いた。
「ロザリーさん
お手紙とリボンありがとうございます。母はよくこのリボンでわたくしの髪を言ってくれました。リボンを結び終わると鏡を見せわたくしのプリンセスと言って髪を撫でてくれました。
そんな母がわたくしの夢に現れました。生前と変わらぬ姿で。
ロザリーさん、平民である貴女が母の最期を見届けてくれたこと感謝しております。革命が勃発したとき、ポリニャック伯爵夫人をはじめとする母の周りにいた貴族達はわたくし達を見捨てて早々に亡命。母の拠り所は貴女だけだったと思います。もし宜しければ母の最期の様子お話し下さいませんか?
マリー・テレーズ」
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