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「え・・・あ、大した写真じゃないし、隠し撮りとかもあるから見ても楽しくないよ?」
誤魔化してるつもりなのかもしれないけど、全然誤魔化しきれてない。それどころかさらに怪しくなった。
隠し撮りってなんだよっ。
「見せて」
オレがじっと睨むと、風磨は渋々スマホを取り出して写真アプリを開き、オレに差し出した。それを受け取って見てみると、そこにはエグいぐらいの数の写真が収められ、その全てが隠し撮りだった。
それは大学内だったり部屋だったり、中には寝顔もあっりして思わず消したくなったが、いくら隠し撮りとはいえ人のものを勝手に消すことは出来ない。それにオレは見逃さなかった。そのフォルダの名前が『普段の二千翔』だったことを。
オレはスマホを操作すると1つ前に戻り、他のフォルダを確認する。すると見せてくれたフォルダの他に『二千翔』とだけ書かれたフォルダを見つけた。
なんでフォルダを分けてるんだよ。
怪しさ満載のそのフォルダを開いたオレは、そこに映し出された写真に思わずスマホを落としそうになる。
「なんだよこれ!」
いきなり叫んだオレに驚く風磨にスマホを突きつける。すると風磨の顔が一変して青ざめた。
「おま・・・お前・・・こんな・・・こんな写真撮りやがってっ」
あまりのことに言葉が上手く出てこない。だってそこには、ベッドの上のオレが写っていたから。それもたくさん。
あられも無い姿を晒すオレの写真がこれでもかというほどあり、さらに動画まであった。その動画を弾みで再生してしまったオレは、今度こそスマホを取り落とした。
幸いにも壊れなかったのだろうそのスマホからは、ベッドの軋む音とパンパンという卑猥な音、さらにオレの喘ぎ声が鳴り響いていた。
「な・・・な・・・なんてものを・・・っ」
生々しいことの最中の音に耐えきれず耳を押えたオレの横で、慌ててスマホを拾って動画を止める風磨。
動画が止まり静けさを取り戻した寝室で、オレは我に返る。
「風磨っ」
オレが風磨の手からスマホを取り上げようとするより早く、風磨がスマホを背中に隠す。
「よこせよ、それっ」
「ダメだよ。消すじゃん」
「当たり前だろっ」
どうにか風磨からスマホを取ろうとするが、残念ながら体格差で叶わなかった。オレと風磨は身長が10cm違う。
それでも諦めきれずに飛びかけると、オレは風磨にがしっと抱きしめられた。
「絶対に消さない。オレの支えなんだ。これがあったからいままで耐えられたんだ」
そう言って腕に力を込めてオレの動きを封じる。
「会いたくて会いたくて・・・だけど会えないから、オレはスマホの中の二千翔に会って、二千翔を思って一人でしてたんだ。そうやってきたから、いままでいられたんだ」
ぎゅうっと抱きしめる風磨の腕の中で、オレは抵抗をやめた。
「それでよかったんだ。そうすればオレの中の思いも身体も落ち着いて、普通に生活出来たんだ。だけど最近、それじゃダメになっちゃって・・・。いくら二千翔の写真を見ても、動画を見てその声を耳元で聞いてもダメなんだ。いままでみたいに身体が騙されてくれなくて、いくら二千翔としてると想像しても、身体は熱くなるのにイケない。抜けないから溜まっていくばかりで、もう限界で・・・」
考えてみれば、風磨との生活は全て風磨任せだった。最初の頃こそオレをベッドに誘うために写真をチラつかさたけど、それはオレが抵抗したからだ。オレが素直に従えば、風磨は始終優しかった。無理なことも痛いこともしない。嫌がることもしなかった。ただオレのためにしてくれるだけだった。オレは風磨に自分からキスしたこともなければ、風磨の下肢に直接触れたことも無いし、ましてや口でしたことも無い。
そりゃ手でしてても、されたことがないんだから騙されないよな。ていうか、逆によく最近までそれで誤魔化せてたもんだ・・・。
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