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「だめだよっ」
何消そうとしてるんだよ、とブツブツ言いながら中を確認していた風磨はぎょっとなって叫んだ。
「消されてるっ」
さっき削除したフォルダに気付いた風磨がショックを受けている。
だけど、そんなに怒ってない様子だ。
「良かった。バックアップ取っといて」
と、ほっとしている。
は?
「お前・・・バックアップって・・・」
「大事なものだからね」
と当然のように言うけど、じゃあオレが消すのは無理ってこと?
オレはため息をついた。
きっとこれからも写真は増えていくのだろう。でもこれに関しては風磨の方がうわ手のようで、消すことは出来ないらしい。
風磨のスマホはもう見ない。
消せないのなら見ないようにするしかない。
オレは風磨の隠し撮りと写真収集癖を諦めることにした。
一所懸命フォルダの復元を始めた風磨を横目にふと窓の外を見ると、春の陽気はすっかり変わり、日差しが強くなって来ている。
もう春も終わりだな。
そう思ってると、復元を終えた風磨がオレを後ろから抱きしめた。
「もうすぐだね」
その言葉にオレは嬉しくなる。
もうすぐ、風磨と初めて結ばれた日がやってくる。
風磨も覚えててくれたんだ。
「あの日、二千翔をお持ち帰りしてよかった」
そう言って笑った風磨の顔は、いままで見た中で一番眩しかった。
了
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