春の終わり

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しばらく腰を強く押し付けオレの中で果てた風磨は、ようやくずるりと自身を引き抜いた。それとともに中に出されたものがとろりとこぼれてくるが、オレはそのまま動かずにいる。 突然の出来事に、心が麻痺したかのように何も感じない。 目は開いてるのにテーブルに突っ伏したまま動かないオレに、恐らく我に返ったのだろう風磨が背後で焦っているのを感じる。だけどオレはそのままだった。 この感じ、前にもどこかで・・・。 ぼんやりとそんなことを思う。 あれは初めての時だ。 あの時もこうやって、何も考えられずにぼんやりしてたっけ。 だけど、あの時と違うな。 あの時は訳も分からず犯されて、身体は悲鳴を上げて心はパニックを起こしていた。 だけどいまは、快楽を知った身体は満たされて満足している。 オレの身体・・・すっかり淫乱だな・・・。 そうやって動かずぼんやりしているオレとは反対に、風磨が手際よく後始末をしてくれる。身体をきれいに拭いてくれて服も整え、オレを抱えてベッドに寝かせてくれた。そしてまたリビングに戻っていく風磨の背中を見ながらオレは目を閉じた。別に眠い訳では無いけれど、目を開けているのもしんどい。 何でこうなったんだろう・・・。 リビングからカチャカチャという音がする。割れたマグカップを片付けてるんだ。 あれ、割れちゃったのか・・・。 揃いの色違いのそれを、オレは結構気に入っていた。いつの間にか一緒に暮らしていて、いつの間にかに増えていた最初の物。それから少しづつ、風磨は揃いのものを増やしていってた。 さすがにもう、同じものは売ってないよな・・・。 そんなことをぼんやり考えていると、風磨が戻ってきた。 オレがそのまま目を開けずにいると、風磨はオレの脇やってきて床に座ったようだ。そしてベッドが僅かに沈む。手でもついたのだろうか。 「二千翔・・・ごめん」 小さなつぶやき。 その声に目を開けると、風磨がベッドに突っ伏していた。 「なんで・・・謝るんだよ」 オレがそう言うと、風磨がぱっと頭を上げた。オレが寝てると思ったんだろう。一瞬驚いた顔でオレを見て、だけどすぐに視線を下げた。 「二千翔に酷いことした。こんなことするつもりじゃなかったんだ。ただ本当に二千翔に助けてもらいたくて来たのに・・・二千翔に恋人がいると思ったら許せなくて・・・」 助けて欲しい、は本当だったのか。だけど、なんでオレに恋人がいたら許せないんだよ。 「オレの恋人なんてどうでもいいだろ?どうせお前にもいるんだろうし」 だいたい関係ないじゃん。関係を解消してから3年も経ってるんだから。 「・・・いないよ」 「は?」 「恋人なんていない」 何言ってるの?イケメンモテ男に恋人がいないわけないだろ。それとも別れたばっかり?それで助けてもらいたいとか? 「もしかして別れたから助けて欲しい?その恋人とより戻したいの?」 「別れた恋人もいないよ」 「でもお前、女のところに行っただろ」 3年前、理想の彼女に会ってここを出ていった。なのに、風磨は首を横に振る。 「・・・嘘だから」 小さなつぶやき。 オレは聞き間違いだと思った。 「え?」 「あれ、嘘だよ。女なんていない」 「だって・・・1週間女のところでやりっ放しだったって・・・女の匂いもさせて帰ってきただろ?」 そんな直接的には言ってなかったけど、そんなようなことを言ってた。甘い香りをさせて・・・。 「自分の家に帰ってたんだ。匂いだって、香水売り場にテスターくらいあるだろ?」 自分の家? 引き払ったって言ってただろ?だからもう、帰る家がないって・・・。 それにテスター?女からの移り香じゃないの? 「家を引き払ったのは嘘。いつでも帰れるように、家は残してあったんだ」 嘘? なんで? 突然入ってくる情報の多さに、オレは軽くパニくる。
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