俺を呼べ

「俺を呼べよ」
「は？私の話聞いてた？明日彼氏とデートなんだって」
「だからデートに俺を呼べよ」
「何であんたを呼ばなきゃならないのよ」
「お前に合う相手かどうか見極めるためだろ」
「余計なお世話」
「お前一人でどう見極められるんだよ。また変なやつに騙されたりしたらどうするんだ」
「あんた以外の人に騙された記憶はないわ」
「俺は騙してないよ。夢破れただけだろ」
「今の彼氏は馬鹿な夢追い人じゃなくて堅実な人だから大丈夫。優しいしお金持ってるし」
「出たよ出たよ。優しくてお金持ち。騙される奴は大体そのセリフ言うんだよなぁ」
「うるさい」
「じゃあ勝手に着いていくよ」
「やめて。本当に彼のことを愛してるんだから邪魔しないで」
「邪魔なんてしないよ。ただお前のことが心配で見守っていたいだけだ」
「よく言うわよ。私を置いて消えていなくなったくせに」
「まぁそれもそうだな。ははは」
　墓前で元夫の声が聞こえたような気がした。