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焼うどんは意外においしかった。
汚くてマジすんませんと暁士が十回くらい言っていたユニットバスも、締め切りに追われて掃除をさぼりまくっていた時期の初歌の家よりはるかにましだった。
好きに使ってくださいと言われたテレビをつけ、ソファに座っていると、インターホンが鳴った。
ふと、壁にかかっている時計を見た。
時刻はいつの間にか六時を過ぎている。
ソファの反対端を見ると、さっきまで一緒にテレビを見ていた憂がうたた寝している。
何となく、閉まっているドアを振り返った。
宅配か何かなら出たほうがよいのではないか。
そう思ったが、初歌はこの家の住人ではないし、何よりすぐに、暁士の言葉を思い出した。
『もしインターフォン鳴って誰か来たら、絶対出ないでください』
気付くと、いつの間にか憂が起きていて、初歌に向かって人差し指を立てていた。
音を立ててはいけないのジェスチャーである。
初歌は硬直し、次に、テレビの方へ首を回した。
『生きてるやつでも死んでるやつでも、俺の留守中はろくなの来ないと思うんで』
暁士の言葉が脳裏に蘇り、暫く離れなかった。
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