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十馬
目覚めた時には、朝になっていた。
鳥の囀りが聞こえ目を開くと、ぼんやり視界に移ったのは、本堂の天井だった。
空気がひやりとしている。
思わず首を回し、辺りを見回した。
布団の位置は、眠りについた時と同じである。
ただ、体には布団が掛けられていた。
一応布団をめくってみると、当然だが、服はそのままである。
初歌の布団から少し間を空けてもう一枚布団が敷かれており、なぜかそこに憂が座っていた。
浴衣姿の体育座りで、スマートフォンをいじっている。
その横顔が、昨日までの幼さでなく大人の気配を漂わせているように思い、初歌はまだ少し重い瞼を瞬きさせた。
その憂の顔が振り向き、初歌を見る。
「あ、起きたんですね」
口調も違う。憂は敬語なんて使わなかった。
「おはようございます、初歌さん。
ちょっと待っててください、おじいさんか暁士さん呼んできますね。
あ、お手洗いとか行きますか?」
寝起きな上に面食らっている初歌は、すぐに返事をできなかった。
その初歌を見て、憂の姿をした人は面白そうに笑うと、付け足した。
「あ、わたしは十馬って名前で、暁士さんの友達です。
高梨初歌さん、よろしくお願いします」
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