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人生って意地悪
ハンバーガーを食べたいと十馬が言ったので、二人は暫く歩いて海辺近くのバーガーショップへ行き、やはり十馬の提案で、ついでに由比ヶ浜の浜辺まで歩いた。
平日の昼間だからか爽やかな天気なのにあまり人がおらず、少し浜辺を歩き回ったら、靴の中が砂でいっぱいになった。
初歌は水には入らなかったが、ビーチサンダルを履いている十馬は砂も水も構わずに波打ち際へ入っていき、膝の上まで服を濡らしていた。
やがて浜辺から引き揚げ、堤防のベンチで靴を脱いで砂を払った。
払っても払っても細かい砂が靴下からこぼれてきた。
「やば、無限に砂出てきますよ」
あははと十馬が笑う。
つられて初歌も思わず笑った。
「うん、やばいね。このままじゃ家に入れない」
「大丈夫ですよ、歩いてるうちに落ちるんじゃないですか」
そんなことを暢気に話していたら、初歌のスマホがバッグのポケットで震えた。
取り出してみると、暁士からのメッセージだった。
初歌のアパートを調査したらしく、結果が簡潔に報告されていた。
要約すると、アパートの除祓は難しく、成功したとしてもひと月では終わりそうにないので、やはり初歌は他に住む場所を探したほうがいいという内容だった。
隣に座って足をぶらぶらさせていた十馬が、尋ねた。
「いい知らせ? 悪い知らせですか?」
うーんと、初歌は唸る。
「どっちでも……悪くもないけど、良くもないかも」
「何て?」
初歌はスマホの画面を十馬に向けた。
「暁士さんも和尚さんも、怪我とかなかったみたいでそれはよかったんだけど、やっぱり私はあの家に住めなさそう」
ふうんと十馬が鼻を鳴らした。
「じゃあ、実家に帰るんですか?
帰れる実家があるなら、いいんじゃないですか?
少なくとも、ネカフェ難民とかにはならなくて済みますよね?」
「うーん……
でも私ね、やりたいことがあって、親の意見とか無視して無理やり東京に出てきてたから、失敗して戻るのって……すごく大変なの。
絶対色々言われるし、もしかしたらケンカになるし、そしたらまた無事に出てこれるかも、ちょっと自信ないし」
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