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初歌や暁士と同じくらいの年の、若い男だった。
華奢な感じは全くしないが、色が白く、整った雰囲気の美形だった。
スーツを着て黒い髪を撫で付けているが、奇妙なことにサラリーマンや公務員という感じがしない。
誰だこれはと初歌が訝っているうちに、暁士が男に気付いて笑顔を向けた。
「あ、宋さん。ほんとに来たんすか」
暁士が初歌の方を向き、付け足した。
「初歌さん、すんません、この人は憂のなんていうか保護者で、宋十郎さんです。
ついさっき、こっちに向かってるってライン入ったんですけど、言いそびれちゃって」
宋十郎さんは憂の親にしては若すぎる気がするが、こう見えて実は四十代とかだろうか。
戸惑いを隠しつつ会釈した初歌に向かって、宋十郎は小さく頭を下げた。
「私は三蕊宋十郎といいます。
憂……十馬がお世話になったと聞きましたので、お礼とご挨拶に伺いました」
淡々と、しかし丁寧に、宋十郎は言った。
「いえ、お世話とか、全然そんなことないんですけど……」
恐縮する初歌に構わず、宋十郎は喋る。
「それに、ひとつお願いがあります。
差し支えなければ、メールアドレスかラインのアカウントを教えてもらえますか」
正体不明の男にいきなり連絡先を教えてくれと言われ、初歌は瞬きした。
それを見て、あっと暁士が声をあげた。
「宋さん、えっとそれって、十馬のためですよね。
あ、初歌さん。なんか憂が帰った後、憂のスマホに十馬のメッセージが残ってたらしいんですよ。
なんか初歌さん宛てっぽいんですけど、当然憂のスマホに初歌さんの登録なんかないんで、メモ帳に書かれてたらしいんですけど」
きょとんとする初歌の顔を見つめつつ、宋十郎が喋る。
「十馬がメッセージを残すのはとても珍しいので、嫌でなければぜひ、お願いしたいのですが」
十馬のメッセージとは何だろう。
奇妙に思うより気になる気持ちのほうが強く、初歌は頷いて、スマホを取り出した。
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