また会えるのを

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 三十分後、初歌は高速バスに乗っていた。  あの後、宋十郎が持っていた、憂と十馬が共有しているというスマホと、ラインのアカウントを交換した。  バスの乗車時間が迫っていたので、お喋りもそこそこに、初歌は二人と別れた。  十馬のメッセージは、憂が送信するらしい。  いつ来るんだろうと思っていたら、スマホが着信で震えた。  憂からの、十馬が書いたというメッセージだった。 『初歌さん、  一緒に海へ行ってくれてありがとうございます  誰かと一緒にご飯を食べるのも久し振りだったし、楽しかったです  でも私、自分の話ばかりしてごめんなさい  初歌さんがどんなマンガを描くのか聞き忘れたから、すごく気になってて、次に会ったら教えてください  私はマンガも結構読むし、上手じゃないけど絵も描くんです  また会えるのを楽しみにしてます』  読み終えて、初歌はほうと溜息を吐いた。  何というか、言葉遣いがすごく丁寧だが、ごく普通のメッセージだった。  普通のメッセージだが、きっと大切に書かれた文章なのだろうと、何となく初歌は思った。  そういうものを人から受け取る機会は、少なくとも初歌の場合はそう多くない。  どう返信しようか、きちんと考えたい気がして、初歌は一度ラインを閉じた。  すると、今度は別のメッセージが届いた。  俊也からだった。  俊也には今朝ラインしていたから、そのメッセージへの返信だった。 『返信遅くなってごめん。年末年始でもないのに帰ってくるんだ?!  まさか何かあった?とにかく久し振りだし、話そう!  夕飯一緒に食いたいんだけど、迎えに行ってもいいかな?』  遠慮や衒いのない文章。俊也は昔から真っ直ぐな人だった。  昔はずっとお兄さんに感じていた俊也が、なぜか今はもっと身近に感じられた。  液晶画面を見て、初歌は自分でも気付かないうちに微笑んだ。  返信を打ち始める。 『うん、話したい』 *
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