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暁士と憂
それを聞いて固まったのは、初歌だけではなかった。
暁士と呼ばれた男性は、狼狽えながら男の子と初歌を見比べ、口をもごもごさせた。
「えっ、いや、おい……」
一方で、初歌も硬直していた。
呪われているとは何だ。
いや、それ以前に、なぜこの人たちは初歌の名前を知っているのか。
「あの、どこかで、お会いしましたか」
初歌が訊くと、男性が初歌を振り返った。
「え?」
「なんで、私の名前知ってるんですか」
「え? 名前?」
すると、男の子が言った。
「この人、ういか、っていうんだって」
「げ、お前、馬鹿」
黙りなさいのジェスチャーだろう、男性が男の子に向かって人差し指を立てた。
「あ、すんません、こいつが変なこと言って」
男性が慌てて繕おうとしたので、初歌は考える前に言っていた。
「あの、呪われてるって、なんでそう思うんですか。私のこと、知ってるんですか」
男性が見開いた瞳で窺うように初歌を見つめ返す。
そして、やや落とした声で言った。
「……あの、もしかして、呪われてる自覚あったりします?」
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