色に奪われる世界

1/3

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 その日、【日本】中、いや世界中の【平和】が突如として蹂躙された。  最初に異変が確認されたのは、ブラジルの有名なビーチであるコパカバーナであった。雲一つない真っ青な空の下、【海辺】には老若男女問わず、多くの人たちが海水浴を楽しんでいた。 「今日はいつも以上に暑いね」 「本当。なんだか【太陽】もいつもより大きいように感じるわ」  眩しそうに、手で日除けを作りながら女性が空を見上げる。 「あれ、何かしら」  女性のつぶやきに、男性も同じ方向に視線を持っていった。 「何だ、あれ?」  空から真っ黒い何かが、すごいスピードでビーチに向かって伸びてきていた。さながら、真っ黒なレーザービームが、空から照射されたような感じだ。それはビーチに到達し、【地震】のような地響きを立てた。  黒いレーザービームは消えることはなく、そのまま天に向かってそびえ立つ、黒い塔のようにその存在感を示している。あまりのことに人びとは、逃げることもせず、ただ黒い塔を見つめていた。  次の瞬間、黒い塔が横に滑り出し、有名な観光名所でもあったコパカパーナ海岸は黒く塗り潰されたように、跡形もなくその存在を消した。  ブラジル中で一斉に起こったこの怪現象は、おおよそ5分ほどで、海岸線も含めてブラジルだった場所をすべて真っ黒に染め上げていった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加