必死過ぎて通報された。

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必死過ぎて通報された。

 「あ! かおりのお父さんっ、あれ、あそこ!」  「かおりっ! 良かった…」  少女かおりの友人ゆりと、かおりの父親である男は駆け足で接近した。  ゆりの声が聞こえたような、と振り返りその満面の笑みを浮かべた少女は、その後ろから駆けてくる男をスルーして話し出した。  「ゆりちゃん! 奇遇だね、…どうしたの?」  流石に焦った友人を無視するほど薄情ではなかったので、事情を聞こうと構えたその時。  それまで友人のことしか見ていなかったので、突然見知らぬ男が抱きついてきてパニックになるのも当然の帰結だろう。    「嫌ああ!!」  全力で持っていた旅行鞄を男の横腹にぶつけ、横転しできた隙きを突いて友人の手を取り「ゆりちゃん早く逃げようっ!」と駆け出すも、後ろから引っ張られてその場に留まってしまう。  「なんで止めるの?!」  「落ち着いて、とにかく話を…」  「そんな場合じゃないから!!」  グイグイと無理矢理にでも男から離れようとする様子に、ゆりも異変を感じ始めた。  自分の父親が来たというのに、この慌てぶりはなんだろう? もしかして、何かあるのかな、と。  ゆりは、かおりから親子関係については聞いていなかった。かおりは、親しい友人には話しづらかったのだ。何しろ、友人の家族はとても仲の良い一家だったので。    とここで、倒れていた男がヨロヨロと起き上がる。家出用にこさえた荷物だ、相当の威力だったのだろう。火事場の馬鹿力との相乗効果はバツグンだ!  「かおり、よく見てくれ、驚かせてすまなかった…私だよ。……大きくなったな」  一方の少女は、見知らぬ男が父親と名乗ったことの恐怖でますます警戒心が上がっていた。もしかして自分の友人を騙して誘拐を企んでいるのではないかと。  冷静に考えれば、もう少し、まともな対応ができたかもしれない。しかし、家出中の身では安全な場所など無いに等しい。いつかは実行しようと考えていたのだから、不審者に警戒する考えは根付いていたのだ。  「さぁ、一先ず家に帰ろう。母さんにはよく言っておいたから」  「……っ」  「か、かおりちゃん?…」  一度目は動けた。パニックで一周回っていたので。けれど二度目は、恐怖が上回って固まってしまった。友人を危険に晒さず守るため、やはり自分は大人しく捕ま…  「さぁ」  「っっだれかたすけてぇえええ!! ゆうかいされちゃううう!!」  「「かおり(ちゃん)っ?!」」  ーーるわけないでしょおがっ!!  火事場の馬鹿力第2ラウンドの鐘は、こうして盛大に鳴り響いた。  
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