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一日の診療を終えて、僕は敷地内の別の建物に向かう。
病院と連絡通路で繋がっている建物の中は明るく、ラウンジのような広いスペースでは、楽しそうに遊んでいる多くの子どもたちの姿があった。
「あ、院長先生だ。あそぼ、一緒にあそぼ」
あっという間に、僕は子どもたちに囲まれる。どの子も純粋でキレイな瞳をしていて、その笑顔をさらに引き立てている。
「危ない、危ない。引っ張ったら、先生、転んじゃうよ。しょうがないな、鬼ごっこでもやろうか」
僕の提案に、子どもたちは大はしゃぎをしている。ここには、病気とは無縁の笑顔が溢れている。ここにいるだけで、僕は心が癒されていくことを実感する。
「うん、やろう。わたし、たくさん走っても息がきれたりしないから、絶対に院長先生に捕まらないよ」
一人の女の子が、腰に手を当てて僕に話しかけてきた。
「本当かぁ。よーし、確かめてやる。最初の鬼は僕だー」
そう言って、僕は子どもたちを追いかけ始めた。
この施設には、多くの子どもが暮らしている。そして、その子どもたちにはしっかりとした教育を行いながら、ストレスのない生活を提供している。もちろん、料金など取っていない。
徹底した栄養管理、運動、教育を提供してそもそも病気にさせない、こんな施設を増やしていくことが国が取った施策の一つだった。この施策によって、僕はますます困っている人間を救えるようになっていった。
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