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ご両親が診察室を出ていったあとに、僕は内腺電話をかけた。
「もしもし、僕だけれど。近日中に一人頼むよ。両肺だ。できるだけ肺活量の多い子がいい。身長や体重、胸腔の大きさなどは電子カルテで調べてくれ。それと、今回の移植の残りもので、この前の膵臓の子どもの移植をやろうと思う。両親に連絡をしておいてくれ」
肺活量の多い子か、先日、鬼ごっこをした時に話をした女の子の顔が脳裏に浮かぶ。
未分化細胞ではうまくいかないケースの生じた培養臓器ではなく、本物の人間の身体の中で移植用の臓器を育てることが最善だと国は考えた。当然、心臓など一つしかない臓器の移植元となれば死は免れない。死ぬべき必要のない人間の死を踏み台にしてまで、移植手術を行うことに抵抗もあった。移植元に人間の基本的人権問題もある。
それに対して国は、基本的人権という原則が障害となったため、戸籍を持たないつまり人間として登録されない存在を作ることとした。そしてこの方法は、改正臓器移植管理法として法制度化された。
その方法は、生後まもない乳児の時に売られた子どもたちを、僕が管理する臓器ファームという施設に入れ、ストレスのない生活を臓器を抜き取られるその日まで過ごさせるというものだった。
貧困層の国民は、自分たちの子どもを移植用に売ることで、自らの加入する移植保険のランクを上げていった。
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